まず確認したい。「AIを使っていいか」は大学ごとに違う
最初に必ずやってほしいのが、志望校が生成AIの利用についてどう考えているかを確認することです。大学によって方針は異なり、「補助的利用なら可」とするところもあれば、「提出物への利用そのものに慎重」なところもあります。
特に、募集要項や出願ガイド、学部のアドミッションポリシー、入試関連のお知らせには、生成AIについて言及されている場合があります。先ほどもお話しした通り、慶應義塾大学SFCでも、AO入試に関して生成AIの扱いを追記しており、AIを使って思考を深めること自体は否定していませんが、提出物そのものをAI生成物に依存することは認めていません。実際のHP
この姿勢は、今後ほかの大学でも広がっていく可能性があります。だからこそ、「みんな使ってるから大丈夫」「使ったら即アウト」といった極端な認識ではなく、志望校の公式情報を自分で確認することが何より重要です。
そもそも生成AIとは何か
ここで、生成AIについて簡単に整理しておきます。
従来のAIは、大量のデータからパターンを見つけて予測や分類を行うのが得意でした。それに対して生成AIは、学習したデータをもとに、人間が書いたような文章や画像、音声などを新たに生み出すことができます。
ただし、便利だからといって無条件に信頼してはいけません。生成AIには、もっともらしい嘘を出力する「ハルシネーション」の問題があります。統計データや研究結果、制度の説明なども、それらしく書いていても誤っていることがあります。志望理由書で数値や専門的な内容を使う場合は、必ず大学公式サイト、官公庁、論文などで事実確認を行うべきです。
また、著作権やプライバシーの問題にも注意が必要です。他人の志望理由書に似た構成や表現を生成させることは、倫理的にも危ういですし、個人情報を含む内容を安易に入力することも避けるべきです。生成AIは便利な道具ですが、最終責任を負うのは自分自身であることを忘れてはいけません。
AIはどれがいい? 4つの主要サービスをどう使い分けるか
受験対策でよく名前が挙がる生成AIにはさまざまなものがありますが、ここでは代表的な4つ、ChatGPT、Gemini、NotebookLM、Claudeを取り上げます。
ChatGPT:まず最初に触るならこれ
ChatGPTは、いわば“何でも屋”です。文章の整理、アイデア出し、壁打ち、構成の見直しなど、基本的な用途はかなり幅広くこなせます。特に、自分の考えを言葉にしていく段階や、「この経験をどう表現したらよいか」と悩んだときに使いやすい印象があります。音声会話も活用しやすく、面接練習との相性もよいです。
Gemini:検索や資料読み込みと組み合わせやすい
Geminiは、使用感そのものはChatGPTと大きく変わりませんが、Google系サービスとの親和性や、資料をもとに整理する使い方に強さを感じます。大学の募集要項や学部サイト、PDF資料を読み込みながら考えを整理したい人には相性がよいでしょう。
NotebookLM:自分専用の受験対策AIを作れる
NotebookLMは少し毛色が違います。自分がアップロードした資料だけをベースに応答してくれるため、志望理由書・募集要項・アドミッションポリシー・活動記録などをまとめて入れ、自分専用の学習環境を作るのに向いています。要点整理、想定問答、解説音声、ポッドキャスト風まとめなど、面接対策で真価を発揮しやすいツールです。
Claude:日本語の表現を整えたいときに便利
Claudeは、文章の読みやすさや日本語表現の滑らかさに強みを感じる人が多いAIです。特に、誤字脱字の確認、言い回しの改善、文章構造の微調整など、仕上げ段階の添削で使いやすい印象があります。
なお、これらのサービスには無料版と有料版があり、使えるモデル、処理量、安定性、データ保持の扱いなどが異なります。とはいえ、総合型選抜や推薦入試の対策であれば、まずは無料版でも十分活用できます。大切なのは、最強のAIを探すことではなく、目的に合わせて使い分けることです。
実際にどう使ったか。資料作成でのAI活用手順
ここからは、実際に志望理由書や提出資料を作るときに、どうAIを使うと効果的かを順番に紹介します。
1. 最初はAIに書かせない。とにかく自分で書き出す
最初の段階で一番重要なのは、自分自身の言葉を大量に出すことです。
よくあるのが、「○○大学向けの志望理由書を800字で書いて」とAIに最初から作らせてしまう使い方です。たしかに一見それっぽい文章は出てきます。でも、そこにはあなた自身の経験、感情、迷い、価値観が入っていません。面接で深掘りされたとき、書類と本人の言葉にズレが出やすくなります。
だからこそ、まずは下手でもいいので、自分で書くべきです。単語の羅列でも、時系列メモでも、箇条書きでも構いません。むしろ最初は、完成度より情報量が大事です。目安としては、指定文字数の2倍以上を書くくらいのつもりで、自分の経験、学んだこと、なぜその大学なのかを書き出してみてください。
AIは、少ない材料から中身のある文章を作るのはそれほど得意ではありません。薄い表現で水増ししたり、根拠のない“それらしい話”を混ぜたりしがちです。一方で、大量の情報から重要なキーワードや軸を整理することは非常に得意です。だから最初にやるべきなのは、「AIに書かせること」ではなく、「AIが整理できるだけの素材を自分で出すこと」です。
2. 募集要項とアドミッションポリシーを読む
総合型選抜で重要なのは、「すごい経験をしたか」だけではありません。その大学が求める学生像と、自分の経験や志向がどう重なるかが問われます。その判断材料になるのが、募集要項やアドミッションポリシーです。
この部分は、できるだけ自分で読んでほしいところです。大学がどんな人を求めているのか、どんな学びを重視しているのか、自分の活動がその大学でどう活きるのか。そこを考える作業こそ、志望理由書の核になります。
行き詰まったときには、AIに自分なりの要約とアドミッションポリシーを渡して、「どこが合致しているか」「何が足りないか」を見てもらうのは有効です。ただし、大学理解そのものをAI任せにするのではなく、自分が読んだうえで相談するくらいの距離感がおすすめです。
3. 下書きをAIに添削してもらう
自分で大量に書き、大学の方針もある程度つかめたら、ここで初めてAIを本格的に使います。
下書きを読み込ませて、論理構成、伝わりやすさ、具体性、熱意の出し方などを見てもらいます。
この段階では、ChatGPTやGeminiが使いやすいです。たとえば、「論理構成の弱い部分を指摘して」「経験が抽象的に見える箇所を具体化して」「大学への接続が弱い部分だけ指摘して」など、具体的に依頼するほど精度が上がります。
また、AIごとに文章の癖はかなり違います。だから、1つのAIだけで完結させるより、複数の出力を比較しながら、「この表現はわかりやすい」「この観点は自分では気づかなかった」と、良いところだけを取り入れる使い方が向いています。
ここで気をつけたいのは個人情報です。本名、住所、学校名、未公開の活動実績など、本当に必要な情報までそのまま入れる必要はありません。入力前にぼかせる部分はぼかし、利用規約も確認しながら使うのが安全です。
4. AIの文章をそのまま使わず、自分でリライトする
AIに添削してもらったら、次にやるべきは自分の言葉で書き直すことです。
ここが最重要ポイントです。
AIの文章は、一見整っていても、あなた特有の熱量や言い回し、経験の生々しさ、大学との独自の接点が削られていることがあります。特に最初のリライトでは、「修正」ではなく「ほぼ書き直し」くらいの感覚でちょうどいいです。
イメージとしては、骨組みをAIに手伝ってもらい、肉付けは自分で行うという形です。この作業があるかどうかで、提出書類の質は大きく変わります。
5. 仕上げの段階でClaudeなどに最終添削してもらう
何度か添削とリライトを繰り返し、完成形に近づいてきたら、最後は誤字脱字、読みにくい言い回し、文章構造の最終チェックに集中させるのがよいです。このタイミングでは、Claudeのような文章の整えに強いAIが使いやすいでしょう。
ここでは内容を大きく変えさせる必要はありません。むしろ、「内容は変えずに、表現だけ整えて」「誤字脱字と読みにくい箇所だけ教えて」と限定して使う方が、あなたらしさを残したまま質を高めやすいです。
6. 最後は必ず、自分で締める
最終的には、AIが提案した文章よりも、自分がしっくりくる文章を優先してください。
AIはどうしても平均的で無難な文章に寄りがちです。だからこそ、最後に「自分ならこの漢字は使わない」「自分ならここはもっと強い言い方をする」「この表現は自分っぽくない」と調整することが大切です。
合格を決めるのは、整った文章そのものではなく、そこに宿る本人の経験と納得感です。
こんな使い方がおすすめ。面接対策でのAI活用
志望理由書がある程度仕上がってきたら、次に重要なのが面接対策です。ここでもAIはかなり役立ちます。
特に便利なのが、NotebookLMと音声会話型のAIです。NotebookLMには、自分が作った志望理由書、大学の募集要項、アドミッションポリシー、関連資料などをまとめて入れておくことができます。そのうえで、「想定質問を作って」「一問一答形式にして」「志望理由の弱い部分を突く質問を出して」と依頼すれば、かなり実践的な面接準備ができます。
さらに、資料をもとに音声まとめやポッドキャスト風の解説を作り、それを自分で聞き返す使い方もおすすめです。自分の考えを耳で聞くことで、理解の浅い部分や、説明が曖昧な箇所に気づきやすくなります。
また、ChatGPTなどの音声会話機能を使って、実際に声に出して答える練習をするのも有効です。文章として書けていても、口頭で説明しようとすると詰まることはよくあります。AI相手なら気兼ねなく何度でも練習できるので、言語化の精度を上げる訓練として非常に優秀です。
AIを使うときの注意点
ここまで便利な使い方を紹介してきましたが、注意すべき点もあります。
まず、AIの出力を事実としてうのみにしないことです。大学名、制度名、統計、研究データ、学部内容などは、必ず公式情報で裏を取ってください。特に志望理由書では、誤情報が入ると致命的です。
次に、個人情報と機密情報の扱いです。下書きに本名や住所、学校名、未公表の活動内容が入っているなら、それをそのままAIに入れる必要があるのかを考えてください。
そして何より、他人の経験っぽく見える文章を作らないことです。推薦入試や総合型選抜で見られているのは、完成された作文力よりも、その人の歩み、学び、問題意識、将来への接続です。そこをAI的な“きれいな文章”で均してしまうと、むしろあなたの魅力が薄くなります。
まとめ:AIは代わりではなく、言語化を助ける道具
ここまで、志望理由書作成から面接対策まで、推薦入試におけるAI活用の方法を見てきました。
大切なのは、AIはあくまで代筆者ではなく、補助者だということです。
たしかにAIは、速く、きれいで、整った文章を作れます。ですが、受験で本当に評価されるのは、あなたがどんな経験をして、そこから何を学び、なぜその大学で学びたいのかという、あなたにしか語れない物語です。
だからこそ、AIを恐れる必要はありません。ただし、丸投げしてはいけません。
自分の経験を掘り起こし、整理し、磨き、伝わる形にするために使う。そうした使い方ができれば、AIは受験の敵ではなく、強力な味方になります。
番外編:そのまま使えるプロンプト例
最後に、推薦入試対策で使いやすいプロンプト例を紹介します。ポイントは、できるだけ具体的に頼むことです。
自分の考えを整理したいとき
「以下は私が書いた志望理由書に関するメモです。支離滅裂な状態ですが、これらのメモをもとに、私がどのような経験をして、何を学び、何を得たのか、またそれらを大学でどう活かしたいのかを整理して、箇条書きでまとめてください。文章化はまだしなくて大丈夫です。」
アドミッションポリシーと照合したいとき
「私の経験や思いと、志望大学のアドミッションポリシーを添付します。私の経験や強みがこのアドミッションポリシーのどの部分と合致しているか分析してください。また、アピールできていない部分や補強したほうがよい点があれば教えてください。」
志望理由書の添削をしたいとき
「以下の志望理由書の下書きを添削してください。添削の際は、論理的な構成になっているか、私の経験や思いが具体的に伝わっているか、大学への熱意が感じられるか、削除・追加したほうがよい表現があるかを意識してください。全文を書き直すのではなく、原文→修正案の形でコメントしてください。」
最終確認をしたいとき
「以下の志望理由書を最終チェックしてください。誤字脱字、文章構造、読みにくい文章の指摘、よりよい言い回しの提案をお願いします。内容は大きく変えず、表現面のみ添削してください。」




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