「医学部はオワコン」
「早慶に入れば、大学生活も就職後も煌びやかなエリート街道で、人生勝ち組」

近年、このような声も上がっています。

給与の面では、保険料が財源であり昇給が見込みづらい医療業界に比べ、新卒の賃上げなど待遇が向上している民間業界の方が、魅力的に映るのは仕方ないかもしれません。

職場環境の面でも、民間企業であれば都会のオフィスで煌びやかな日常を過ごせる一方で、病院では認知症の老人への対応や排泄物の処理など、地道な仕事が多いのは確か。

そのため、「地方医学部より早慶」を目指す生徒も珍しくありません。

でも、本当に「医学部より早慶」と言い切っていいのでしょうか?

「医療はオワコンだから、早慶から優良企業に就職すべき」
「医師免許はやっぱり裏切らない」

どちらの意見もある中で、今回は医学部入学経験のある筆者が「どちらが得か?」を検討します!

早慶理系は医学部に受かるのか?

まず気になるのは、そもそも「早慶理系と地方医学部はどちらが難しいか」だと思います。

河合塾のパスナビ(偏差値)で比較してみましょう。

筆者作成

このように、早慶理系と地方医学部は、偏差値上ほぼ横並びであり、
「早慶理系と地方医学部の難易度は概ね同等」と言えます。

では、本題の「早慶理系 vs 地方医学部」どちらに進むべきでしょうか?

卒後の平均年収

学生生活、卒後の生活 (年収・勤務地・キャリア)の4つの観点から比較してみましょう。

早稲田大学の理系学部・大学院(基幹研・創造研・先進研)の主な就職先と、それぞれの平均年収を見てみましょう。

(筆者作成 参考: 2024年度 早稲田大学進路状況 、日本経済新聞)

早慶の魅力は、表のような大企業に手堅く就職できる可能性が高いこと。
ゴールドマン・サックスやマッキンゼーなどの外資系有名企業や、総合商社に就職できれば、医師を超える年収も十分に狙えるでしょう。

一方、医師の平均年収はどうでしょうか。

筆者作成(参考:厚生労働省 賃金構造基本統計調査)

こうして並べると企業や職種にもよりますが早慶卒と医師では、概ね同水準〜医師の方が僅かに高年収であることがわかります。

加えて、医師の社会的信用、景気に左右されづらい安定性は無視できない強みです。

卒後の勤務地・生活

早慶を卒業された方の多くは専門職やサービス業へ就職していくため、大都市圏での勤務の可能性が高いです。
都会志向の強い方には魅力的でしょう。

おしゃれなオフィスで社員証をかざす。
業務が終わった後に都心で遊び歩く。

こういった煌びやかな生活に憧れる方も多いのではないでしょうか。

画像はイメージです。生成AIを使用しています。

また、就職する業界もメーカー・IT・サービス業などと広く、大学に入ってからも進路選択の余地が残されています。

ただし、家賃を始めとして生活費の高さはネックとなるでしょう。
子育てとなると、地方との物価の差も積み重なります。

一方で、地方の医学部では、都心でのキャリアは「自動的には手に入りません」
病院の情報は入りづらく、在学中から成績・人脈・情報を意識的に積み上げる必要があります。

とはいえ、努力次第では都会の病院で働くことも可能ではあり、都会と地方のどちらで働くかに感しては、ある程度希望できると言えます。

加えて、地方では生活費の安さも魅力的。
実際に、筆者の知人で地方勤務の40歳前後の医師は「東京にセカンドハウスを買いたい」と話すほど経済的余裕があるそうです。

医師であれば働き方の融通は効きやすく、

・非常勤での勤務

・開業

・育児や出産、定年退職後も働き口がある

といった選択肢も強い利点でしょう。

一方で、当直(夜勤)や、認知症の老人の対応、排泄物の処理など身体・精神的に厳しい部分もあります。

まとめると、
早慶卒では大都市近辺での勤務の可能性が高く、便利かつ娯楽に溢れた日常を楽しめるでしょう。
ただし、金銭的・時間的な余裕はあまり大きくなく、結婚・子育て・マイホームといったイベントには週5日働いても金銭的な不安が伴います。

地方医学部卒では、激務かつ大都市での勤務は確約されません。
他方、金銭的・時間的な余裕は大きいと言えます。週4日の勤務で、家族と幸せな時間を過ごすことも難しくありません。

それぞれの大学生活

早慶といえば、都会・キラキラというイメージが強いのではないでしょうか。

まず、その魅力を考えてみます。

・娯楽の豊富さ
カフェ・レストラン・ショッピングと、大学の帰り道だけで一日が埋まるほどの選択肢があります。

・出会いの多さ
キャンパス周辺には常に若者があふれ、マッチングアプリの母数も都会ならではのスケールです。

空いた時間におしゃれなランチへ行ったり、夜はクラブで踊り明かしたり。
そんな「映える」大学生活を送ることも、都会では可能です。


ただし、理系学部ならではの落とし穴があります。

  • キャンパスが文系と別
    活動場所の問題もあり、文系学生と同じサークルに気軽に参加できるとは限りません。
    せっかく総合大学に入ったのに、接するのは研究室が同じ数人の学生たちだけ、なんてことも……。


  • 男子率が約9割の年も
    理系学部のクラスは「気づけば男子ばかり」もは珍しくありません。
    恋愛に興味のある男子学生にとっては、不利な環境かも。
    実際に、「モテるために勉強したのに結婚できない」と嘆く声も少なくないのです。
    https://www.miraizu-suisen.com/articles/a9-jadq2fru

  • 都会の娯楽に興味がないと宝の持ち腐れ
    友人が少ない、出不精、娯楽にお金をかけたくない人にとっては、都心の立地をあまり活かせないかもしれません。
    早慶の「煌びやかさ」はあくまで可能性であり、特に理系では自分から行動をおこす必要性が増します。
画像はイメージです。生成AIを使用しています。

では、地方医学部の大学生活はどうでしょうか。

まずメリットから見てみましょう。

  • 内向的な人でも馴染みやすい
    医学部の1学年には100人もいないことが多く、「医学部の同級生」のつながりは強固です。学部の全員の顔と名前が一致すると言って良いでしょう。
    また、部活動(医学部のみ)の文化が根強く、私の経験則では8割ほどの学生が何かしらの部活動に入部します。
    このように、半強制的にコミュニティに所属することになるため、
    「都会では友達ができなかった」というタイプの人でも、意外と充実した人間関係を築きやすいでしょう。

  • 過ごしやすい男女比
    医学部は女子比率が約25%であり、東大理Iや東科大の10%前後と比べると、理系学部としてはかなり高いです。
    男女ともに居心地よく過ごせる環境といえるでしょう。


  • 男子には出会いの宝庫
    看護学部・薬学部との合同部活動が多く、医学部単体では考えられないほど出会いの機会が豊富です。
    「医師×看護師」カップルが誕生するのも、地方医学部ならではの光景です。

一方で、デメリットは以下のようなものが挙げられます。

  • 娯楽が少ない。
    部活動・飲み会・恋愛・アルバイトと、娯楽自体は都会と大きく変わりません。
    しかし、部活動の数や、レストランのバリエーション、デートスポットの少なさ、など選択肢の少なさはネックです。


  • 悪い意味でも狭いコミュニティ。
    誰かの失敗や恋愛事情は、あっという間に学年中に広まります。プライバシーは都会より格段に保たれていないと思っておきましょう。


  • 都心でのキャリアは「自動的には手に入らない」
    地方医学部にいると、都市部の病院の情報は入りづらい
    です。
    将来都心で働きたいなら、在学中から成績・人脈・情報を意識的に積み上げる必要があります。

学生生活の面では、

早慶
・華やかなキャンパスライフを送れる環境がある
・必ずしも「映える」生活をとは限らない

地方医学部
・煌びやかなキャンパスライフは望みづらい
・コミュニティに取り残される心配こそ少ない
・狭いコミュニティを窮屈に感じてしまう可能性がある

と考えられます。

"キラキラ"か "安定"か

では、いままでの項目を比較してみましょう。

筆者作成

入試の難易度では大きな差がない早慶理系と地方医学部。
しかし、大学生活から卒業後のキャリアまで、その内実は大きく異なります。

早慶をはじめとした理系では、大手企業の研究職という優良な就職先がほぼ確実。
その上で、確率は低いながらも、ゴールドマンサックスやマッキンゼーなど超一流企業への就職の可能性を探ることができます。
加えて、学生時代から社会人まで都会で過ごすことができ、便利で華やかな暮らしを送れるでしょう。

このように、一見するとエリート街道まっしぐらに思えます。
しかし、男子が多い環境や、都会での生活費の高いことを考慮すると、家庭や私生活には多少の不安が付き纏います。

一方で、地方の医学部に関しては、偏差値は概ね同じである早慶に対しても、平均年収では300-400万円ほど上回ります。
勤務地に関しては、努力次第では都会で働くことも難しくありません。

私生活の面でも、時短勤務や高い結婚率、社会的信用など、他の職業にはない魅力に溢れます。

しかし、高年収の代償に夜勤や排泄物の処理といった、長時間労働や心理的負担は否定できません。

どちらが正解かは、あなたが何を大切にするかによって変わります。
キラキラした大学生活、金銭・時間の余裕、あなたは何を重視しますか?

「老人のお世話をするために勉強したわけじゃない」

「自分より偏差値が低かったやつが、300-400万も多く稼いでいる」

「せっかく勉強するなら、大学生活は遊びたい」

「目先の大学生活より、大学卒業後の長い人生」

人生を振り返ってみたときに、「幸せだった」と思える方はどちらでしょう?

月並みな言葉ですが、お金で幸せは買えません。
自分が何を大切にして生きていくべきか、一度立ち止まって考えてみるべきかもしれませんね。