本連載では、書籍「東大理Ⅲ 合格の秘訣」の中身を引用し、今年東京大学理科3類に合格した人がどのように勉強をしていたのかについて、記事を掲載していきます。

 今回は、一橋大学で仮面浪人して3浪の末に合格した中尾さんにお話を伺いました。

臨床医になりたい★★★★★ 

研究医になりたい★★★☆☆ 

医者以外の道もあり★★★★★ 

高校:東筑紫学園高校(照曜館高校) 

浪人(3浪)(補足:一橋仮面、再受験)

共通テスト:904/1000
出願校:前期 東大理Ⅲ 後期 出願せず  
    私立 出願せず
得意科目:数学・物理・英語

東大への憧れは、小6の『ドラゴン桜』から

 むかしから勉強が好きでした。小学校6年生の頃、『ドラゴン桜』に載っていた東大の入試問題で「円周率が3.05より大きいことを証明せよ」という問題をみたのを今でも強く覚えています。漠然とした東大への憧れを抱いたまま、中1か中2の時に中3部門の東進主催の全国統一模試を受けて偏差値70後半を取り、塾の先生に面談で「理Ⅲも狙えますよ」と声をかけてもらいました。本格的に東大理Ⅲを考え始めたのは、おそらくここからです。

中学時代:ゲームと勉強、どちらも本気だった

 中学時代は大好きなゲームと勉強や遊びをして毎日を過ごしました。勉強が楽しくて、先に進みたい一心で平日は2時間くらい、休日は5時間くらい机に向かいました。勉強内容は英語と数学の先取りでした。『くわしい中学数学』『最高水準問題集』『高校への数学』などを愛用していました。中1で中学3年分の数学を終わらせ、中2で高校数学を開始しました。中3になると『新数学スタンダード演習』に手を出し、東大文系数学で半分近く取れるようになっていました。同時期には競技数学の勉強をいろいろやっていました。英語は、中1で中学範囲を終わらせて、英検と並行しながら高校範囲を学習しました。英検は中1で準二級、中2で二級、高1で準一級を取りました。

スマブラにのめり込んだ高校生活

 ですが、高1になったあたりで、当時はやっていた『大乱闘スマッシュブラザーズ』(通称:スマブラ)という対戦ゲームにハマってしまい、寝食を忘れて熱中するようになりました。当時はスマブラのプロゲーマーを本気で目指していて、練習するか、試合を観戦したり分析したりして戦略や立ち回りを学ぶか、どちらかでした。スマブラの成績は急上昇しましたが、成績は急落。高一の東大同日は理系で数学の偏差値が73くらいで英語も点数で70弱取れていましたが、高2で受けた駿台模試では今までで一番悪い結果を出しました。勉強時間がほとんど取れていないのだから、当たり前でした。結局、高校3年生の夏になるまで、ずっとゲーム漬けの生活を送ります。

ゲーム漬けの日々で、現役は不合格

 高3になっても相変わらずスマブラ漬けでしたが、夏あたりの東大模試では理Ⅲはほぼ E判定でしたがまだ理ⅡではA判定を取れていました。中学まで頑張っていたおかげだと思います。ただ貯金を使い果たしてしまい、秋には理ⅠC〜D判定まで落ち込みました。ゲームをやめたからといって、勉強に対するモチベーションが上がるわけでもなく、理三から理一に変えたこともあってモチベーションが全く湧かず、結局現役時は理Ⅰに出願して共通テストは600後半、二次では数学こそ理三合格者平均くらいはありましたが、国語は20台、英語は50台、化学は10台と散々な出来で、18点差で不合格になりました。合否発表はオンラインで行われ、ズラッと合格者の番号が並ぶのですが、僕の前後の番号の方は受かっていて、二つの番号の間のわずかな行間に、存在しない僕の受験番号を求めて呆然と眺めていたのを覚えています。

孤独な自宅浪人と、2度目の不合格

 ただ、自業自得とはいえ、東大に落ちたことは受け止めきれないくらいショックでした。しかも自宅で孤独に浪人する道を選んだことで、励ましあう仲間もいなかったことから、精神的に不安定になってしまいました。あまり勉強に集中できず、正直何も覚えていません。当然勉強できていないために成績も全く伸びず、結果として、この年も東大理Ⅰを受けて15点差で不合格となり、後期受験で引っかかった一橋大学に進学が決まります。一橋大学の後期は数学が配点の40%を占めるため、数学が得意な僕には有利だったと思います。

一橋大学で仮面浪人を決意

 一橋大学への進学を選んだ理由は、仮面浪人を前提にしていたからです。もともと、僕は進学先を東大に決めていました。ただ、一浪時の反省から、地元に引きこもって勉強するよりも、都会に出て仲間を募ったほうがいいと考えていたんです。大学進学で上京するのはOKと伝えられていたので、どこかの大学には進学するつもりでした。その中でも文系の一橋を選んだのは、理系大学よりも課題の負担が少なく、受験に与える影響が小さいと考えたからです。理系大学は実験や実習などで拘束時間が長期化する傾向が強く、仮面浪人する環境として向いていません。実際に、入学後はサークルにもゼミにも所属せず、最低限の出席だけで大学生活をやり過ごしていました。

都内で仲間と勉強。手応えを感じた2浪目

 表向きには一橋大学1年生、実際は東大受験2浪目となる一年が始まりました。大学には最低限必要な出席分だけ顔を出し、毎日5~6時間くらい受験勉強に充てる日々でした。結局大学は秋から休学しています。この年は僕にとって、中3以来初めてちゃんと勉強し始めた年でした。SNSで知り合った受験友達と一緒に、都内の様々な自習スペースをめぐって勉強を続けました。

初の理Ⅲ受験、A判定からの惨敗

 成績は大きく上昇し、この年の秋までは理Ⅰ志望でしたが、夏も秋も理ⅢはA判定が出たので、(悪い時は理Ⅲ C判定とかでした)改めて理Ⅲ志望に変えました。最後の模試では、初の300を超えて理Ⅲ A判定を取り、本当に受かるのではないかと思いました。しかし、初の理Ⅲ受験は合格最低点からマイナス30点で惨敗しました。易化した数学で計算ミスをしまくり、1完で青ざめました。不調もありましたが、直前期自分に必要な勉強をきちんと見極められず、あまり時間を回さなかった教科があったのが理由だと思います。とはいえ、この年は4回もA判定が出ていましたから、再チャレンジの余地はあると判断しました。

勝負の3浪目、模試は安定もメンタル不調

 勝負の3浪目。大学は休学していましたが、若干メンタルが不安定であったこともあり、勉強時間は毎日平均5時間程度でした。模試の判定は基本Aで、一番悪い時でA判定ラインから5点下のB判定でした。

 そして迎えた4度目の共通テスト。共通テストはものすごく苦手でしたが、国語がうまく行ったのもあって得点率90%を越せたので、個人的には悪くなかった気がしています。理Ⅲの中ではかなり低い方なので、共通テストリサーチではE判定でした。二次での挽回を目指し、本番を迎えます。

 二次試験一日目の国語はそこそこの出来。現代文はすごく簡単だったのに、古典は微妙な出来だったので、併せたらほどほどではないでしょうか。感触としては35くらいです。次は勝負も数学でした。難化していましたが、理Ⅲボーダー勢を大きく引き離した手応えはありました。感触としては100点くらいでした。

 二次試験二日目の理科は、物理がかなり易化した印象なのに対して、化学が史上最難レベルで難しすぎて僕には太刀打ちできませんでした。均せばトントン、80点ちょっとくらいの出来だと感じました。英語は、リスニング音声のスピードが速いし、設問も難しいし、そもそも扱っている文章の内容自体もわかりにくかったのですが、リスニング単体としてみたら、過去最難関クラスだと思いました。80点ほどの感触でした。

自己採点してみると全体で380-395くらいかなという印象でした。とうとう8割型で受かったかもしれないと直感的に感じました。

 3日目の面接は、なぜか再面接に回されました。特に「なぜ浪人しているか」などバックグラウンドを深掘りされました。浪人友達も再面接に回された方が何人かいたみたいなので、仮面浪人していると再面接になりやすいのかもしれません。ただ、圧迫面接ではありませんでした。

 面接が終わり、合格発表まで自分は面接落ちしたのではないかと思い、生きた心地がしませんでした。3/10の合格発表では、番号照会で「合格」の2文字が表示されて本当に嬉しかったです。親や、お世話になった方も喜んでくれました。開示では400を超え、上位の方で受かっていたのも嬉しかったです。

各教科の勉強法と反省点

 国語の勉強はそんなにやれませんでした。現代文は、学校の授業と、東進ハイスクールの林修先生の授業を聞きました。浪人中は東大の過去問を中心に勉強しました。古典は、なんといっても単語と文法が大事だと思います。中高で配られたテキストをやってから『古文解釈の方法』に手を出し、そこから過去問演習に移行しています。僕みたいにならないためにも、理三受験生の方は国語を疎かにしないことをお勧めします。

 数学は、中学入学後からどんどん先取りしました。中1で中学範囲を終わらせて、中2で高校数学をやりつつ、難関高校の入試を趣味で解くなどして演習しました。自習で終わった内容から『一対一対応の演習』随時解いて行きました。中3には『新数学スタンダード演習』に移行して、高1から『新数学演習』をやりました。ただ、『新数学演習』は当時はあまり勉強していなかったこともあり、終えるのに3年かかりました。浪人してからは、2浪目は数学以外が中心でしたが、3浪目で数学に再度力を入れなおして、受けた東大模試の半数で100を超えられるようになるまで成長しました。東大の過去問は解きつくしていたので、京都大学や東工大の過去問、模試過去問や『大学への数学』の学力コンテストの問題などを解きました。数学はよく安定しないと言われますが、点数の期待値と下限を引き上げておくことは極めて大切だと思います。

 英語は、英検対策と並行しながら自習しており、中1で中学範囲を、中3までに高校範囲を終わらせました。現役時は東大の過去問一択で勉強しており、基本は演習です。よくリスニングについてどうすればいいか、と質問を受けますが、私はリスニングの実力は半分リーディングの実力で決まると考えています。流れてくる語句を意味として認識できないと、音を聞き分けられても意味がないため、英文として理解する力の養成が先だと思うからです。リスニング対策自体の僕のおすすめは海外YouTuberの動画です。Nas DailyやDrew Binskyの動画をよく見ていました。英作文ではChatGPTを活用しました。自分の書いた英語を入力して、文法ミスや不自然な言い回しを指摘してもらうと、すごく精度が高いです。AIの英語はかなり正確で、東大英語の採点基準でもかなり高得点が狙えます。お勧めの勉強法ですね。2浪目になってからは英語を見直すために、『鉄壁』で単語力を補いながら『英文標準問題精講』『英語総合問題演習 上級編』などで修業をし直しました。東大受験にとって英語はできないと勝負の土俵に立てない要素があるのでしっかりやっておいたほうがいいと思います。

 理科は物理と化学を選択しました。物理は『新物理入門』を一読しました。原理から解説してくれますし、かなり肌に合いました。逆に『名門の森』はあまり合わない内容でした。東大のほかには東工大、京大の過去問を使いました。化学は、現役受験時はまったく当てにしていなかったものの、2浪目で本格的に補強を行いました。『化学の新演習』『重要問題集』などを使って、ある程度化学の典型的な考え方や解き方について学びました。それから東大や京大の過去問を使った演習を行いました。

 社会は地理を選びました。地理自体好きで、先生も面白かったので、基本的には学校の授業を聞いていて共通テストでもあまり困りませんでした。参考書も経由せず、そのまま共通テスト過去問へ移行しました。

 共通テスト過去問は、苦手な国語だけ20年分くらい、社会も3年分解きました。予想問題を2~3回解いただけですね。二次試験の勉強がある程度共通するのもそうですが、一方で、二次試験は結構やりました。数学は『東大入試の軌跡50年』を使って45年分くらい、英語と理科は25~35年程度、手に入る分だけやりました。国語も優先度は低かったのですが、10年分解きました。

医学もビジネスも。広がる未来への興味

 私の合格の秘訣は、支えてくださった親や周囲の方などの環境と、正しい方向の努力をし続けられたことだと思います。

 大学に入ってからは、医学はもちろん、数学や物理、社会科学や人文科学にも興味があり、勉強を始めています。あとは、ビジネスの世界にも興味があります。起業家の方にお話を伺って、なにか自分で事業を興せたら、とも考えています。いろいろな経験をして人間的にも大きく成長したいと考えています。

 将来の僕が何をしているのかは、今の僕にはわかりません。ですが、今まで社会に支えてもらったので何かしらで社会に貢献できる人になりたいと思います。