今回ご紹介するのは、東大経済学部に合格した人の志望理由書です。東大の推薦入試に見事合格したSさんは、どんな志望理由書を書いていたのでしょうか?実際の原稿を確認してみましょう。

 東京大学経済学部を志望する理由、高等学校等在学中の自己の活動の成果、大学卒業後の自己の将来像等について入力してください。(1,000字程度を上限とする。)

 私は地方の魅力を調理することで、日本と世界の明るい未来をつくるために東京大学経済学部を志望する。

 私はこれまで、日本各地でまちあるきを行ってきた。その経験の中で多くの人に出会い、対話を行ってきた。何十年も和菓子屋を営む人、伝統工芸品を作る人。皆、口を揃えて、「この伝統を守りぬく!」と言っていた。その目的のもとで、信頼を培ってきたのだ。だが、私はこの「伝統」「信頼」を守りたいという気持ちが逆に新しいことへの挑戦を阻害する内向性の要因になっていると考える。若者のアイデアを受け入れると口では言いながら、自分たちのこれまで上手くいったレシピを突き通してきたのが、これまでの日本社会だ。私は地方にある資源や伝統の調理法を時代に合わせて進化させて行かない限り、それらは人々に見捨てられ、地方の魅力は消滅すると危惧している。

 私は高等学校では、身近にある内向性や既成概念を現実的に打破する方法を模索してきた。その一例として、生徒会では突然校則を変えるのではなく、校則を変えられる仕組みを作ることで先生方を説得し、最終的に校則改正が実現した。私の考えを捻じ曲げようとする大人に対し立ち向かってきた。また、ビジネスコンテストでは常連客が集まり交流の場ともなっていることが、かえって新規顧客の来店を阻害していると考え、その解消に向けたレシピを提案しグランプリを獲得した。日本数学A-lympiadでは社会問題を数理的に解決する手法が評価され、優良賞を受賞した。

 私は東京大学において「地域にある魅力の調理法」と「内向性を打破する組織学」の2点を中心に学びたいと考える。そして、前期教養課程で地方創生へのヒントを探すことを意識しながら、文理問わず広範な学びを積極的に行う。まさに私が既成概念を突き通すことになってはならない。そして、アイデアが生まれる組織とは何か、地域の魅力を伝えるためにはどうすればよいか、研究したいと考える。

 東京大学での学びや経験を生かして、卒業後は地方の内向性を打破するための機関を作り、地方の資源を若者や関係人口の面白いアイデアによって調理して「時代の最先端を行く伝統」を提供する場にすることを考えている。これまでの生産者の方々にはこれまで通り信頼を得た伝統を守っていただき、その上で私達がその方々と協力し、伝統をアップデートする活動を行っていく。私の住むーーーーーー(※個人特定できるため削除)で盛んな〇〇産業にデザイン性を付加して現在世界で販売されている事例がある。このような活動を、地方都市を中心に組織的に行っていくのである。

 私はビジコンでも、生徒会でも、また普段の生活でも、常に実際にあるき、話すことを重視してきた。新幹線で隣になった人にも話すほどである。そしてその中で問題解決へのヒントを得てきた。私は大学在学中もそういった対話を通して、社会への理解を深めていく。

 これが、私の思う地域の魅力を調理するということである。その実現の為、東京大学経済学部を志願する。

 この志望理由書のいいところは、やはり「地域の魅力を調理する」というとても特殊で面白い言い方ですね。

 「地域の魅力化を行う」とか、「地域の活性化を行う」というような言葉を使うことは簡単です。しかし、この志望理由書ではそういう書き方ではなく、「地域の魅力を調理する」という一見して目を惹くワーディングを使っています。東大ともなると、これくらい尖った志望理由書が求められるのかもしれないと考えられますね。

 その上で、自分がなぜ東大を目指すのか、バックグラウンドの面も含めてしっかりと語られているという点で、この志望理由書は評価できると思います。自分が生まれ育った地域や、自分がどんなバックグラウンドを持って生まれてきていてここにいるのかということを明確に書いてあります。自分の人生をしっかりと振り返り、どうして今自分が東大を志望しているのか、1000文字という文字数の中でしっかりと表現されていると考えられます。

 このように、自分の人生をしっかりと振り返って語っているという点で、東大の先生から評価されたのではないかと考えられます。

 この志望理由書からは、凡庸な言い回しではなく、しっかりと自分独自の言葉で自己アピールをすることの大切さが見て取れるのではないかと感じられます。ぜひ、この点は多くの人に参考にしてもらえればと思います。