ゴルフを学ぶといえば、プレーの技術向上を思い浮かべる人が多いだろう。都市型のビル内にあるゴルフスクールで、シミュレーターで練習することもすっかり一般的になってきた。
しかし関西国際大学(兵庫県)が2026年春に開設する「ゴルフマネジメントコース」のゴルフの学びは、全く違うアプローチを取る。
「目指しているのは、ゴルフ産業を支える『支配人候補』の育成なんです。プレーの技術向上ではなく、ゴルフ場やゴルフ関連企業の運営・経営を学ぶ4年間です」
支配人候補生の育成とは、一体どういうことなのか?日本初となるこの取り組みについて、山下泰生副学長と、コースを担当する上村和美教授に話を聞いた。
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ゴルフの「経営」を学ぶとは?
——ゴルフマネジメントコースと聞くと、プロゴルファーの養成を想像してしまいます。
「実は全く違うんです。私たちが目指しているのは、ゴルフ産業を支える『経営人材』の育成なんです。プレーの技術向上ではなく、ゴルフ場やゴルフ関連企業の運営・経営を学ぶ4年間です」
「あくまで経営学部なので、126単位中、ゴルフ関連の専門科目は36単位程度。残りは一般的な経営学の科目や教養科目です。ゴルフ場の支配人になるためには、ゴルフのことだけ知っていれば良いわけではありません。お客様との関係構築、スタッフのマネジメント、地域との連携など、総合的な経営能力が必要なんです」

若手人材不足という業界の課題
——ゴルフ産業が抱える課題とは何でしょうか?
「一番の問題は人材不足、特に若手がなかなか入ってこないことです。学生にとって将来像が見えないのではないでしょうか」
「ゴルフ場は朝4時から15時頃までのシフト制なんです。私たち教員もインターンシップ先として提携するためのご挨拶で『何時に行ったらいいですか』と聞くと、『じゃあ朝5時で』と普通に言われることもあります。
学生も実際にインターンに行くと、『最初はえっ朝が早い!と思ったが、15時に終わると意外と時間を有効活用できていいかも』と言うんです。体験しないと時間感覚を理解するのは難しいようですね」
「やはり、昔のゴルフは接待の手段みたいなイメージが強いことの影響もあると感じています。今の若い世代にはゴルフ産業がどういう仕事なのか、どんなキャリアパスがあるのかが見えにくい状況が続いています」
——実際のゴルフ場ではどのような仕事があるのでしょうか?
「キャディさんが一番分かりやすいですが、それだけではないんです。フロント業務、芝の管理、イベント企画、営業、経理まで、本当に幅広い。
芝の管理ひとつ取っても、最新の技術と職人の技が融合している分野で、すごく奥が深いんです」

なぜ三木市でゴルフマネジメントなのか?
——なぜ兵庫県の三木市でこのようなコースを開設することになったのでしょうか?
「三木市には25のゴルフ場があるんです。ゴルフ場の総数では千葉県市原市が日本一ですが、三木市のコースは面積が大きく日本トップクラスなんですよ。三木市では金物産業、山田錦、そしてゴルフが三大基幹産業なんです」
「でも実際には、地元の人でもゴルフ場がこんなにあるということを知らない方が、意外と多いんですよ。ゴルフ場が多い土地柄ゆえ、例えば神戸電鉄には『広野ゴルフ場前駅』という駅があるんです。昔はお座敷列車と接続していて、ゴルフが終わってからお座敷列車で温泉に行くという団体もいたそうです。そういう歴史的に長い背景が三木市にはあります」

——コース開設のきっかけは何だったのですか?
「もともとは2021年にスポーツ庁の委託事業が採択されたことがきっかけです。スポーツ系ではない大学で採択されることは非常に珍しかったんですが、その時に三木市では市としてゴルフ産業の活性化をやるという話がありました。
それで実際にゴルフを授業に入れていったという経緯があります。今回の開設は、今まで授業として点在したものを、体系的にコースにするというイメージです」
理論と実践を往復する学習法
——具体的にはどのような授業が行われるのでしょうか?
「最大の特徴は『教室と現場の往環』です。カリキュラムの基本が教室と現場の往環なんですよ。1年生の時からサービスラーニングで現場に出ていく授業も入っていて、それがゴルフに関するプログラムもあります」
「インターン型の授業もあり、実際に営業しているゴルフクラブで大会の運営をお手伝いすることもあります。スタートコールで選手の名前を呼んだりということを手伝うんです。行くとやはり『大変だが面白いな』と言ってくれます」
「自分たちの手で大会を運営し、場合によっては小さな失敗をしたりする。そういう実体験を経て帰ってきて、教室で『ああ、だからあの理論が必要だったんだ』となる。
そして翌年になって現場に行くと、去年より成長しているという螺旋状にスキルアップしていくイメージですね」
——すでに経営学部で行われているゴルフ教育関連の授業に対する、学生の反応はいかがですか?
「プロジェクトマネジメント演習では週に2時間連続で、実際にゴルフ場や関連企業を訪問します。2コマ続きの時間を活用し、朝9時からスタートして、現地で見学してお話を聞いて、ということができるんです」
「学生たちは『なんでこれをやらなければいけないんだろう』と思うとうまく螺旋に乗れないんです。でも『いろんなことを好奇心を持って楽しいな』と思ってやってくれる人は、自分が変わっていくのを楽しんでいる様子ですね」
地域ぐるみの支援体制
——地域との連携体制について教えてください。
「2025年3月に三木市、当大学、三木市ゴルフ協会の三者協定を締結しました。これで市内25のゴルフ場すべてが協力してくれています」
「実習先も多様で、地元密着型のゴルフ場から、シャトレーゼが経営母体となっているゴルフ場まで。ここは、売店もシャトレーゼのお菓子なんです。休憩の時にアイスクリームを食べていいよと言われるので、学生はそこに惹かれたりしている様子です(笑)」
どんな学生に来てほしいか?
——どのような学生がこのコースに向いていると思いますか?
「意外に思われるかもしれませんが、ゴルフの経験は必須ではありません。好奇心を持って、いろいろなことを楽しいと思える人が理想的です」
「全くゴルフ経験のない野球部出身者もいれば、ゴルフ経験者で『こんなにゴルフ場での仕事は奥が深いのか』と驚く学生もいます。ゴルフ経験者の学生でも、ゴルフ場がどんな経営をしているかは知らないわけですよね」
「経験者と未経験者が混ざることで、経験者に『すごいじゃないですか』と言ってくれる人がいると、自分の経験が当たり前でなかったことに気づく。そういう相互作用があって、両方が伸びていってくれると面白いなと思います」

——入試についてはいかがでしょうか?
「総合型選抜という面接重視の入試で、ゴルフ経験をアピールしてくる受験生もいるかもしれませんが、ゴルフマネジメントコース専用の入試を考えているわけではありません。
経営学部の入試で、その中でゴルフマネジメントコースを希望する学生を受け入れる形です」
日本初ゆえの手探りと期待
——日本初のコースということで、苦労もあるのでは?
「参考にできるモデルケースが存在しないので、カリキュラム設計から学生募集まで、すべてが手探りです。どのような学生が集まるのか、実際に始まってみないと分からない部分も多いですね」
「でも逆に、学生たちもコースの歴史を作っていく当事者になれるんです。それは非常にエキサイティングなことだと思います。好奇心旺盛な学生なら、きっと面白がってくれるはずと確信しています」
「ゴルフ業界からは『こういう人材がほしかった』という声を数多くいただいています。高校の校長先生方からも『進路の新しい選択肢として興味深い』という反応をいただいています」
——今後の展望をお聞かせください。
「まずは地元への貢献を第一に考えていますが、将来的には海外展開も視野に入れています。海外の提携校との連携で、留学生が日本で学んだことを自分の国に持って帰って、ゴルフ場運営で実践するということも出てくるかもしれません」
「ゴルフ産業は、実は非常に奥が深いんです。芝の管理一つとっても、最新の技術と職人の技が融合している。そういう面白さを若い世代に伝えていきたい。そして彼らがゴルフ産業の新しい未来を切り開いてくれることを期待しています」

■関西国際大学ゴルフマネジメントコース
- 開設:2026年4月
- 所属:経営学部経営学科地域マネジメント専攻
- 特徴:理論と実践を組み合わせた螺旋的学習、地域産学官連携
- 受入予定人数:1学年 約20名
記事内画像提供:上村和美教授

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