みなさんは普段chatgptなどの生成AIをどのように利用していますか?

仕事でのアイデア出しやメール文の作成、プライベートでも悩み事を相談している人もいるかもしれません。


こうしたなか、ゲーム開発とAI活用の研究者の新清士教授はこう語ります。

「ChatGPTの利用目的は、第2位が性的な対話なんですよ」

新教授が参照するのは、MITとOpenAIの共同調査に関するデータです。

利用目的の第1位は創作活動、そして第2位に“性的な対話”が並ぶという意外な実態が見えてきた――というのです。

今回は、新教授に人間とAIの意外な関わり方と止まらないAIの進化について、話を聞きました。

意外なAIの使われ方 ― 第2位は“性的対話”

ーーChatGPTをはじめとする生成AIの普及は目覚ましいですが、実際のところ、人々はどんな使い方をしているのでしょうか?

新教授:表向きは仕事の効率化とか勉強のサポートとか言われていますが、2024年7月に発表されたMITとOpenAIが行った大規模な利用実態調査の結果を見ると、全く違う現実が見えてきます。利用目的の第1位は「創作活動」、これは想定内です。しかし第2位、これが「性的なコンテンツ」なんです。

そもそも、AIはニュースや百科事典などのネット上で収集可能なデータを元にしています。性に関する言葉はほとんど学習していないんです。そのため、そういう方面の表現力は非常に乏しいんです。それにもかかわらず、ユーザーは性的な目的で使用しているというギャップが明らかになり衝撃を与えました。

「性的なコンテンツ」という表現にびっくりするかもしれませんが、要するにAIを通じて恋愛のようなチャットをしているということなんです。このデータは、能力的に完全でなくとも、要するに人がAIに対していかに感情的なサポートを期待してるのかということの裏付けなんです。

「Consent in Crisis:The Rapid Decline of the AI Data Commons」より。チャート左側はデータセット構成していると思われるサービスのカテゴリー、ニュースや百科事典といったもので50%以上が構成されている。チャート右側は、100万件のユーザーログの分類。1位は創作活動の利用(Creative Composition)だが、2位が性的コンテンツ(Sexual Content)。ニュースは1%以下


聞き手:AIに性的な対話を求めている要因はなんでしょうか?

新教授:AIのインタラクション性(対話のしやすさ)の良さにあると思います。性のことや感情的に落ち込んでいるときに、AIは人間に相談するよりも基本的にポジティブな反応をするように設計されているからです。

内容をしっかり受け止めて、それに対してポジティブな返答をする仕組みになっているのでユーザーは段々と心を開いて、きわめてプライベートなことまで相談するようになっていく。心理的安全性を確保した会話をユーザーに感じさせるようにしているんです。利用するユーザーの一部には、それが段々と恋愛感情にも似たようなものへと発展しく人も出るわけです。そして、最もプライベート性の高い性的な結びつきを求める会話になっていくという流れだと思います。

実は、ChatGPT-4やGoogleのGeminiの最新版には、人間の感情に配慮する機能が組み込まれています。これは2024年の後半頃から本格的に導入され始めた技術で、「RLHF(人間からのフィードバックによる強化学習)」という方法によってトレーニングをされたものです。

どういうことかというと、人間がどのような返答があると、快不快を感じるのかをAIに学習させていくのです。ただし、その規模は大きく、人間が数百万単位でAIとの対話に対して「この回答は感情的に適切か」「この返答は人を傷つけないか」「これは暴力的すぎないか」といったことを評価し続けるんです。専門的にトレーニングを受けた評価者を使って行うので、非常に費用が掛かります。そのコストをかけて、人間の感情がどう動くかを学習させて、その学習結果をAIに組み込んでいくんです。

この技術の実装には、多数の人間による評価が必要なためにも高いコストがかかるため、大手AI企業でないと難しい部分もあり、現在はOpenAIとGoogleが突出しています。中国系のAIは技術力は高く、急激にアメリカのAIの能力をキャッチアップしており、難しい問題を解くといった課題解決には遜色ない能力を獲得しつつあります。しかし、まだ、感情面での配慮はまだ追いついていない。だから、DeepSeekに代表される中国系のAIは、会話していても「頭はいいけど、感情的な会話をすると、反応はいまいち」という状態です。

つまり、現在の最先端のAIは、単に質問に答えるだけでなく、「どう答えれば人間が心地よく感じるか」を学習し続けて、ユーザーに実際に心地よさを感じさせることが目的の一つになっているんです。こうした機能の発展が一因となって、人々がAIに感情的なサポートを求めるようになってきた大きな理由の一つでもあります。

AIの開発側も、自社のAIをユーザーが繰り返し利用してくれる関係性である「エンゲージメント」を高めることがサービスの成功のためには重要です。だから批判ではなく自己肯定感を上げる反応をし、ユーザーにとって心地よいと感じられる会話ができるように設計しているんです。


人間より人間らしい? チューリングテスト突破と驚異の進化

──AIはもう人間の代わりにもなりうる存在なのでしょうか?

新教授:2025年3月にはAIが「古典的チューリングテスト」を突破したと、米カリフォルニア大学の研究者が発表しました。チューリングテストとは、現在のコンピュータの原理を考えた一人の数学者のアラン・チューリングが1950年に提案した「チャットで対話している相手がAIか人間かを見分けるテスト」です。相手が人間かコンピュータであるのかを隠したまま、モニター越しに5分間のチャットを行い、相手が人間かコンピュータかを当てます。

 そこで、もし、コンピュータのことを人間だと間違える率が7割を超えたら「AIが知性を持った」と言えるとされてきたのですが、ついにChatGTPを利用した調査で、7割の人が「AIの方が人間らしい」と判断したんです。まだ、検査方法は素朴な手法なので、さらに複雑なテストが行われることになると思われますが、もう人間は人間とAIとを会話では区別できない段階に入りつつあるということなんです。

しかし、重要な事実も明らかになりました。実は、人間はチャット時に相手が、知性があるかどうかで判断していないということが明らかになったのです。「人間ぽいことを言っているかどうかどうか」という印象で人間は話している相手が、人間かAIかを判定していたことが分かったのです。つまり、そもそもAIに知性があるかどうかを、人間が判定できないのではという課題が浮かび上がってきたのです。

また、相談事に対して、人間の回答とAIとの回答とを比較してどちらがより人間らしいと感じるのかという研究も出てきているのですが、なんと、AIの回答の方が人間らしいというデータも出始めてきています。もはや、相談相手としては、人間よりもAIの方が上になりつつあるのではということを示唆するデータです。まだまだ、AIの知性や会話能力には限界があるにも関わらず、もしかしたら部分的には、人間を凌駕し始めている面も出てきていることを示唆する研究も次々に登場してきています。

一方で、AIに深く思い入れた人の研究はまだまだ限定的なのですが、

AIチャットサービスが突然中止になったとき、ユーザーがどういった反応をするのかという研究もありました。結論としては、友達のように親しい人が亡くなったのと同じくらい強烈な喪失感を感じたという結果がでていました。

AIに本来人格はなく、人格があるかのように思っているのは人間側です。AIは膨大な学習を土台に、チャットなどを通じて得られた入力情報に、どのような返答をするのが適切かということを予測して、出力しているにすぎません。しかし、人間がAIからの返答が適切だとと感じられれば感じられるほど、不思議なことに、人間はそこに意識が存在すると感じてしまうのです。そこに存在するAIを意識があるとは言えないと思うのですが、それでも、やはりその気持ちを打ち消せないのです。人間心理の不思議さです。

これまでの人間に行っていた「実験心理学」をAIに応用しようという「機械心理学」という分野も登場し始めています。もはやAIの研究を極めると、人間とは何かを探る研究になっていくんです。

──人間とAIとの共存におけるデメリットはあるのでしょうか?

新教授:そこは正直まだわからないです。AIの本格的な登場からわずか数年しか経っていないため、長期的に人間の心理に対してどういう影響を及ぼすかという研究はまだまだ行われていません。1年を超えて、AIと深い関係を持ったユーザーにどんな影響が出るのかという長期的な研究結果は世界的にもまだ出ていません。

これはただの予測ですが、人間の脳や思考パターンから考察すると、一定数依存する人たちも出てくるのではないでしょうか。ただ、ほとんどの人たちはちょうどいい距離感を保って使用できると思います。

──仕事も代替され始めているのでしょうか?

新教授:すでに現実になっています。アメリカではエンジニアの新規採用が停止され、現職のエンジニアも解雇され始めている。現在のコーディング作業の3割がAI生成だと言われていますし、僕のようなプログラマーでない人間でも、指示だけで本格的なゲームを作れるようになりました。AIが登場後、ベテランが求められる仕事の量は、全く変わっていないのに、仕事につきたてのジュニア層の仕事の減少が顕著になっていると言われています。AI時代にどのように自分の知識の吸収の仕方や、専門性の育て方は大きく考え直す必要が出ています。

映像も、人間が作ったら3週間くらいかかってしまうものでも今はAIに指示するだけで自分ひとりで2時間程度で作れてしまいます。

https://youtu.be/H0B80iLLiaU

新教授が作例として作成した動画。作成には1時間ぐらいしかかかっていないという

──この進化速度の背景にあるものは?

新教授:コンピューターは1965年から「性能が一定期間で2倍になる」というムーアの法則があり、これが約60年間続いています。しかし、AI向け半導体メーカーとして世界を牽引するNVIDIAのジェン・スン・フアンCEOが2024年に行った講演では、AIの性能に関してはこの法則は続いており、今後10年間で半導体性能は約100万倍にまで爆増すると予測しています。

考えてみてほしいのですが、自分の持っているスマートフォンの性能が今より100万倍増加したとしたら、それはどんなものになるでしょうか? それは想像が難しい世界です。つまり、今見ているAI技術はまだ本当の入口に過ぎないということです。しかし、AIは人間の想像を超えるスピードで性能が向上することだけは確実で、それによって社会は大きく変わろうとしているのです。