「いま、推薦入試が熱い!」。2023年頃から過半数を占めるようになった推薦・総合型選抜は、ますます選ばれるようになっていきましたが、その勢いは未だに衰えるところを知りません。かつて多数派だった一般入試も、もはや縮小の一途を辿っていくようです。

 おそらく、この記事を読んでいる方の多くも、推薦入試を考えているのではないでしょうか。ただ、「志望理由書ってどうやって書くの?」など、わからないことだらけで困ってしまいますよね。

 そこで、この連載では「受かった先輩が、どんな志望理由を作り上げたか」「高校時代に、どんな活動をしていたのか」について、合格者に直接訪ねていきます! 

今回お話を伺うのは、神戸大学海洋政策科学部に通う中西涼子さん(仮名)。なんと「もともと大学に行く気はなかった」と笑う彼女が、どうして神戸大学へ進学したのでしょうか? 

彼女の歴史を紐解いていきましょう。記事の最後には、中西さんが実際に提出した志望理由書もついていますので、併せてお読みください。

大学受験をする気はなかった

__なぜ、推薦受験を考えられたのでしょうか?

中西:それが、もともとは大学受験をするつもりすら、全くなくて(笑)。本当にたまたま「神戸大学の推薦」を知ったためでした。

私は小さいころから髪の毛をアレンジしたり、カットされたり、髪に関するおしゃれが好きでした。だから、色々と自分なりに髪の勉強も重ねてきました。セルフカラーのやり方を自分なりにいろいろ勉強してみたり、町の美容院を全部回って、それぞれのサロンのカットの特徴とか、感想とかを全部まとめてみたり……。

当然、将来は髪にかかわる仕事に就こう、美容師になろうと思い続けてきたのですが、そのためには美容の専門学校に入るのが一番早いわけですよね。

でも、ここで親と大衝突を起こしてしまったんです。

__確かに、神大に受かるほど学力があるならたくさん勉強していそうですから、「なんで専門に?」と首をかしげたくなる気持ちはわかりますが……。

中西:確かに成績は良かったんですが、むしろ、私としては高校進学当初から専門学校へ進学する気満々でした。好成績の理由も、受験を意識していたわけじゃなくて、単純に負けず嫌いだっただけなんです(笑)。

でも、親は「せっかく中学受験までしたのだから、大学ぐらいは出てほしい」の一点張り。私の成績がそれなりによかったこともあり、「そこから専門に行くの?」と疑問だったようです。

画像はイメージです。生成AIを利用しています。

「大学に呼んでもらえるかも」

__そこから、どうして神大へ舵を切ったのでしょうか?

中西:高校の集会で、神大で行われる研究プログラム(ROOTプログラム)を紹介されました。

当初はあまり興味がなかったのは確かですが、担任から「これで実績を作れば、大学に呼んでもらえるかもよ」と言われたんです。
どうやら、先生が前に勤めていた学校で、このプログラムの実績をもとに推薦入試に挑んだ方がいたようなんですね。

この時は「神戸大学に推薦入試があること」すら知りませんでしたが、大学受験の勉強をするよりはずっとマシだし、なんだか楽しそうな実験に関われそうだからやってみようかな、と軽い気持ちでエントリーしました。

落ちてもともと、そうしたら専門学校の受験準備をすればいいだけですし、仮に受かって結果を出せれば、いい大学に入れるかもしれませんからね。

アメリカで発表も

__そして、審査に通りプログラムに参加されたわけですね。どんな研究をされたのでしょうか?

中西:私は、やっぱり髪の毛をテーマに扱いたかったので、ブリーチ剤に関する研究に取り組みました。

読者のみなさんの中には、美容院特有のツンとするニオイが苦手な方もいらっしゃるのではないでしょうか。
あれは、アンモニア臭。

「苦手」で済めばいいんですが、実際に体調が悪くなる方もいらっしゃるようで、本気で困っている人もいるんです。

 「どうにかニオイを抑えられないか」から始まり、色々と研究するうちに「環境にやさしい素材でブリーチ剤を作れないか?」とテーマが変わってきました。

従来のブリーチ剤では、どうしても水質に少なくない影響を及ぼしてしまうきらいがあり、「水・海洋環境を学んで、環境に影響を及ぼしにくい素材で作れないか調べよう」と考えるようになったんです。

__ご自身の「好き!」から始まって、とても立派な研究テーマにたどり着かれたのですね。どこかで発表などもされたのでしょうか?

中西:ROOTプログラムでは、最終的な選抜に残れば、アメリカでの研究発表の機会をいただけます。

私も、高3の夏に渡米して、全編英語で研究発表させてもらいました。

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__全編英語とは、すさまじいですね! 実際の受験でもこれを武器にされたのでしょうか?

中西:そもそも、私がROOTプログラムで配属されていたのが、海洋政策科学部の研究室だったんです。せっかくつづけた研究を別の大学・研究室で再始動するよりも、この研究室で続けていきたかった。

アメリカから帰ってきて、いろいろと進学先を考え、研究室の先生にも相談してみたんです。そうしたら、先生から「うち、推薦ありますよ」と衝撃の一言が。

そこで、初めて受験を決意しました。

校内を駆けずり回る

__ある種「偶然の出会いが人生を変えた」わけですよね。とはいえ、ROOTプログラムと高校生活の両立は、大変ではありませんでしたか?

中西:大変でした。大学の研究室に行くのは、基本的に月に1度か2度程度なのですが、当時所属していた吹奏楽部で部長に選ばれたこともあって、研究も部活も大忙しだったんです。

髪の毛の色味の変化を調べるために、サンプルの毛髪に薬品をつけて30分ほど放置する時間があるのですが、この間に音楽室へ走って合奏を見たり、練習スケジュールを指示したり仕事をこなし、それが終わればまた理科室へ走ってサンプルの状態をチェック……。

「大忙し」どころではなかったかもしれませんね(笑)。

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__そこまでタイトなスケジュールでは、勉強も大変だったのでは?

中西:勉強は、隙間時間にこなしていました。授業の合間の10分休みや昼休みを活用しつつ、帰宅後も1~2時間程度は勉強していましたね。

というのも、一般受験も視野に入れていたからです。
偏差値よりも自分の研究内容と合致する研究室があるかで選び、最終的には信州大の繊維学部、山口東京理科大学の工学部、東京科学大学の生命理工学院に絞りました。

受かった後も油断しないで

__最終的には推薦入試で神戸大学に合格されたわけですが、推薦受験をしてよかったところと大変だったところを教えてください。

中西:よかったところは、勉強以外の強みを生かして合格できたことです。私は勉強が苦手ではないものの、勉強が大得意でもありませんから。

ただ、自分をアピールすることや話すこと、表現することなどに苦手がある方は、推薦受験だと大変かもしれません。
私はそれが得意だったので気になりませんでしたが、面接対策などにストレスを感じる方だと、苦労するでしょう。

また、大学に入ってからのほうがむしろ大変になるかもしれません。

__「大学に入ってからのほうが大変」とは、どんなところで感じましたか?

中西:神戸大学は、やはり受験勉強をコツコツ積み上げてきた方が非常に多い環境です。勉強し慣れているからか、手の抜きどころや力の入れどころがわかっている。でも、私にはそのあたりの勘があまりありません。

受講してわからないことを一般受験の友人に聞くと「そんなの、受験でやったじゃん」と一蹴されることもしばしば。
私も一応受験勉強はやってきましたが「やったっけ?」と首を傾げさせられます。

どうやら、同い年の子や推薦受験の子に聞いてみると、私と同じくらいわかっていない人のほうが多そうですから、私が取り立てて落ちているわけではないようですが……。
ただ、受験を勝ち抜いてきた方、とりわけ浪人生などは、知識量や演習量が段違いなのも確かです。

こういったクラスメートと同じ結果を出していくことが要求される環境ですから、合格後も入学後も、勉強面では気が抜けない生活が続くと言えそうです。

「好き」を武器に戦い抜く

もともと推薦を考えていないにもかかわらず、最終的に名門大学へ推薦入学を決める実績が取れてしまう。中西さんのケースもそうでしたが、意外とこのパターンは少なくありません。

おそらく「受験に通る程度の実績が欲しい」と考えると、最低限の実績をそろえようとしてしまいますが、「これが面白い!」と感じたものについては、合否に関係なく納得するまで調べてしまうからではないでしょうか。

つまり、過剰に調べたからこそ、受かっている。「好きこそものの上手なれ」とはいいますが、「好き」だからこそ「合格できる」のであり、「合格できる」まで「好き」になれるかどうかが、試されているのかもしれません。

中西さんの志望理由書はこちら!

https://www.miraizu-suisen.com/database/universities/F128110108654/8dfe1244-780b-42aa-8c87-375e24abc567/motivation-letters/32a82f98-b4d2-486a-942f-a2da7d5b6a69