大分・別府の山の上に、世界121の国・地域(2026年5月1日時点)から国際学生が集まるキャンパスがある。

立命館アジア太平洋大学(APU)。

学生のおよそ半数が国際学生という環境は広く知られているが、「国際系の大学」という一言でくくられることに、現場は少しもどかしさも感じているようだ。今回は入学部の皆さんに、キャンパスの実像と、独自の総合型選抜で何を見ているのかを伺った。


半分は「留学生」ではなく、4年間つき合う同級生

まず押さえたいのは、APUの国際学生が「1年だけの交換留学生」ではないことだ。

「基本的に日本人の学生と同じで、学部に4年間在籍して卒業していく学生です。つまり、4年間つき合っていく同学年ということになります」

だからこそ、APUに向いているかどうかは、この環境にどう適用するかにかかってくる。国際学生と積極的にコミュニケーションを取れるかどうかが、卒業時の満足度に直結するという。

学生の出身地も全国に分散している。「なぜ九州の大学に行くのかは、進路の先生にも保護者にも必ず問われます」。だから学生は「このキャンパスをどう生かすか」を考えたうえでやってくる。目的意識の中身は多様でも、そこだけは共通している。


「英語を身につける大学」ではなく、「摩擦を経験する大学」

国際系の大学と一括りにされることについて、率直な言葉が返ってきた。

「国際系の大学と一緒に考えられる方が多いのですが、私たちはそこと同じではないと思っています」。英語力の習得自体を教育の中心に置く大学とは、設計思想が違うのだという。

「いろいろな国の人とできるだけ出会ってもらいたい。50対50の比率を維持しているのもそのためです。自分たちが当たり前だと思ってきたことが、いろいろな国の人が集まると全く通用しない。言語を超えた先に出てくるその摩擦を、身をもって経験してほしいんです」


同質性を求められないから、真面目でいられる

外からは見えにくい魅力として挙がったのが、キャンパスの空気だ。

「いろいろな国から学生が来ているので、日本人の学生も同質性を求められないんです。『友達と一緒に動かないといけない』という空気がまったくない。それぞれが自分のやりたいことに熱中できるし、真面目にやっているとカッコ悪い、という雰囲気も一切ありません」

学生自身の言葉も紹介された。「学生がInstagramに『誰も否定しないところがいい』と書いていました」。国連で働きたいと言っても「絶対無理だよ」と言う人はいない。むしろ口にすれば、同じ関心を持つ友人につないでくれる。やりたいことを言ったもん勝ちの環境だ。


学び続ける環境が学生を鍛える

意外に知られていないのが勉強量だ。開講科目の約9割が日本語と英語の二言語で開講されるため、同じ科目が2言語分開かれ、時間割は朝から夕方まで詰まっている。通常セメスターの時間割に昼休みという枠はなく、昼をまたぐ休憩も15分。学生はどこで何を食べるかまで含めて、自分でやりくりを覚えていく。授業では、ディスカッションやグループワーク、プレゼンテーションが多く、また国際学生と学ぶ環境の影響もあり、学生の学習時間は日本の大学生の平均を上回る傾向にあるという。

山の上のキャンパスは滞在率が高く、空きコマに街へ降りる選択肢もない。「ここで過ごすとなると、じゃあ課題をやろうかとなる」。教員も約半数が外国籍で、課題も多い。複数の国の学生が混ざったグループワークは、合意までの時間もまるで違う。自然と身につくのは、タイムマネジメントの力だ。


学部選びは「専門」と「プラス」で考える

学部は、アジア太平洋学部、国際経営学部、サステイナビリティ観光学部の3つがある。どの学部を選ぶべきか迷うかもしれないが、心配はいらない。他学部の授業も履修できるため、自分が軸にしたい分野をもとに学部を選び、関心のある領域を横断して学ぶことができる。たとえばNPO・NGOに関わりたい場合、経営の面から実現したいのか、解決したい課題が先にあるのか。そこを聞くと、同じ志望動機でも進む先は分かれる。学部を越えて履修できるからこそ成り立つ整理だ。

入学時点で固めきらなくていい、とも言う。「どの分野に興味があり、どのアプローチが自分に向くのかは、意外と高校時代にはわかりません。ガチガチに固まっていると、かえってミスマッチも起こります」

2023年開設のサステイナビリティ観光学部には、名称の補足があった。日本語では「持続可能な観光」の学部に見えるが、先にできたのは英語名(College of Sustainability and Tourism)で、サステイナビリティと観光は並列の関係にある。学修分野は9つに分かれ、1学年約350人が同じカリキュラムを受けるわけではない。「地球の未来を見据えて、観光というツールや開発という視点で形にしていける人を育てたい。その取り組みに共感してもらえる人に来てほしいですね」


総合型選抜は3方式。「伸びしろ」をどう見るか

APUの総合型選抜は3つ。探究型は、自分で問いを立てて調べ、発表するのが好き・得意な生徒に。論述型は小論文型で、社会課題やエッセイに触れ、自分の考えを表現するのが得意な生徒に。活動アピール方式は、中学卒業以降の活動で「自分は成長してきた」という手応えがある人に向く。年齢制限がなく、社会人経験を経て入学する人もいる。

派手な実績は必須ではない。むしろ強調されたのは、失敗の扱い方だった。留学に行く学生には何を伝えるのか。「帰ってきて時間が経つほど、人は成功したことしか覚えていないんです。失敗したことや、うまくいかないなかで工夫してなじめたこと──しんどい話ほど忘れてしまう。だから、そこをちゃんと覚えておいてくださいと言います」

いわゆる「伸びしろ」を、APUはここで見ている。挫折や失敗からどう成長し、これからどうなりたいのか。それを自分の言葉で言語化し、納得感を持って説明できるか。面接を重視するのもそのためだ。「振り返りができているかは、直接話す中でこそ聞けます。できるだけ2次の面接まで来てほしい」

「入学後も、『この文化圏の人にこういう聞き方をしてはいけなかった』という経験がたくさんある。失敗を次につなげる癖をつけてほしいんです」


「もったいない」のは、設問からのズレ

準備段階で惜しいのは、書類の設問に正面から答えていないケースだという。伝えたいことを詰め込むあまり、聞かれていることからズレてしまう。問いを読み、問いに答える。当たり前のことが、合否の分かれ目になりやすい。総合型選抜は年度内に複数回の募集があり、異なる方式の併願もできる。挑戦の機会が広いからこそ、一つひとつの設問に丁寧に向き合う姿勢が生きてくる。


4月入学と9月入学──制度としてのギャップイヤー

総合型選抜では、出願の時点で4月入学と9月入学を選べる。11月に合格が出てから9月入学までには、10カ月近い時間が空く。「その間に留学やインターンに行くとか、やりたいことを準備できる。海外では当たり前のギャップイヤーが、制度として選べます」。9月は国際学生が多く入学するタイミングでもある。

偏差値でも、英語力の数値でもない。異なる文化と摩擦しながら、失敗を言葉にして次へつなげられるか。APUが総合型選抜を通じて見ようとしている「伸びしろ」は、そうした姿勢のなかにある。