トランプ大統領による外国人留学生の強制退学命令。世間では「ハーバードショック」として大きな話題となっている。

当事者であるハーバード大生たちは実際どう感じているのか。

現在、日本の高校からハーバード大学に進学し映画制作にも取り組む日本人学生・矢座孟之進さんに緊急インタビューを行った。

「きちんと卒業できるかは不安な点も残っていますが、僕たちは日本で話題になっているよりも落ち着いている」と語る、その真意に迫った。

予想していた範囲内?それとも衝撃?

——まず率直にお聞きします。今回の強制退学命令について、予想していた範囲なのか、それとも衝撃だったのでしょうか?

やはり衝撃はありました。3月頃に一度脅迫めいた発言があった際は、まだ「口だけだろう」という感じていました。4月になっても、明らかに違憲だから、実際には起こらないと思っていたんです。

どちらかというと、トランプ側からの無理な要求で、ハーバード大が何か妥協したり、譲歩する必要に迫られることが心配でした。

——まさか留学生を受け入れないという、今回の指示は想定していなかった?

そうですね。ニュースを見た時は正直びっくりしました。

憲法違反だから、今のところは一時的に申し出を認めないとなったとはいえ、これがどういうふうに展開していくか、本当にわからず不安はあります。

——なぜ「ないだろう」と思われていたんですか?

ハーバード大という私立大学への介入の範囲が、政府の権限を超えるからです。要するに大学側に対して生徒を追い出せっていうのは、権限の範囲では言えない。今回、結局できなかったわけですから。

同時に、アメリカが科学や技術で発展できたのは、海外からの優秀な研究者が大量にアメリカにいたからだと、トランプ大統領も理解していると思っていました。

アメリカに研究者が入ってこなくなると、アメリカのアカデミアの地位も落ちてしまうわけですから。

理性的な判断をしたら絶対しないだろうと、思っていたんですが...その時はちょっと甘く見ていました。

学生たちの実際の反応は?

——同級生の間ではどのような反応でしたか?

今回の報道がある前は、そこまで本気にはしていなかった印象です。やはり大統領の権限を超える部分だし、あまりにも大きなムーブすぎるから、それはないだろうと。

誰もそんな本気にしていなかったですね。

「思ったより冷静」な理由と現実的な不安

——つまり、日本で話題になっているほど、ハーバード大生は動揺していない?

そうですね。僕たちは、思われているよりは冷静だと思います。

ただ、不安でないと言うと嘘になります。結局、大学に行けるか行けないかの問題もそうなんですが、それ以外のところでも、トランプ大統領が僕たちが勉強する環境を崩しに来ようとしているわけですから。

——具体的にはどのような変化が起きているのでしょうか?

大きな予算カットもありました。理系研究者は本当に苦しんでいると思います。22億ドル(約3130億円)以上の複数年にわたる補助金などを凍結されたわけです。

ハーバードは、物理や生物の科学系の研究が非常に進んでいて「優れた研究施設があるから、アメリカに行こう」と思って来る人も多いのに、予算カットされて研究ができない。そこで研究しようと思うのは難しいですよね。

——監視体制の変化もあるとか?

はい。ホームランドセキュリティ(国土安全保障省)の担当者たちが、大学をずっと見張ってるらしいんです(あくまで噂です)。もちろん生徒を脅そうとするわけではなくとも、みんな「自分はここにいるべき人間でないかもしれない」と思ってしまいますよね。

本来であれば、みんな頑張って大学に入って、歓迎されるべき場所なのに。

色々な意味で、今までとは違う環境になるんだろうと思っています。国からの圧力も続くんだろうと思いますから。

もし今回のトランプの命令が撤回されたとしても、僕が休学する前にいたハーバードとは全然違う環境になっていると思います。

大学からの対応は?学生への連絡は?

——大学側から外国人留学生に対して何らかの文書や対応はありましたか?

学生に直接メールは届いていないです。ホームページで学長から「僕たちは、あなたたちがここで学べるようにサポートする。」という声明は発表されていますが、生徒にはまだ直接は連絡がきていません。

実は何も来てないからこそ、安心している面は正直あります。もし本当に今すぐ転校する必要がある立場にいるんだったら、学校側は迅速に対応するはずです。

これは前々からずっと疑惑があったわけだから、大学も準備しているはずなので。

——具体的にはどのような対応が想定されますか?

本当に転校が必要なら、おそらく昨日の時点で大学からいろんなオプションが提示されているはずです。例えば「大統領が変わるまで休学してもいいですよ」とか「こういう学校に転校するのはどうですか?」みたいな。ハーバードはそういう手厚い支援をする大学ですから。

それがないということを考えると、大学側もまだ最悪の事態だとは想定していないのではないかと考えています。でも、まだわからないです。本当に。

今後の海外留学への影響

——今回の件で、日本から海外大学への進学は減ると思いますか?

減るんじゃないでしょうか。少なくともトランプ大統領が大統領でいるうちは、アメリカの大学へ進学する人は多分減ると思います。

単純に、いきなりそういうことが起こって、いつ退学になるかもわからないし、今のような不安があったら、アメリカという選択肢はなくなっていくんじゃないでしょうか。

——教育投資としてのリスクも高くなりますね。

そうですね。当時、僕が高校から大学へ行くときは、リスクを深くは考えていなかったんです。今回も何回か脅迫みたいなことがトランプ大統領側からあり、晴天の霹靂というわけではなかったですが、突然と言えば突然です。

実際「本当に言い出すんだ」という点では。

だから、いつ何が起こるか分からないという意味で言えば、リスクは高まると思います。

それでもハーバードを選んで良かった

——それでも海外挑戦は意味があると思いますか?

はい。今回の一連の騒動を経て、僕はすごくハーバードという大学が好きになりました。

——なぜでしょうか?

トランプ大統領から色々な要求を受けたものの、簡単に飲まずに戦い続けた。ちゃんと学問の自由を守ろうとする大学であることがわかりました。

実際アメリカでも、ハーバードの人気は今年上がったらしいんです。他大学の一部は圧力に屈したと思うんですよね。ハーバードはそういう意味で、いい学校だと再認識しました。

——これから海外留学のリスクを取ることの意味について、どう考えますか?

あらゆる挑戦にはリスクがつきものです。たまたま今回そのリスクを引いてしまっただけで、僕らは学生としてやるべきことを、ちゃんとやる。

少なくとも、ハーバード大は僕たちの学びの場を守ろうとしてくれています。

現在の活動と今後の展望

——もし本当に転校命令が出たらどうなるのでしょうか?

転校という選択肢もあるでしょうし、休学という選択もあるかもしれません。でも正直、選択肢は、まだ大学側からのアナウンスもなく正確には不明な状況です。

——最後に、今の心境を教えてください。

正直、本当にどう展開していくかわかりません。一時的には回避されていますが、まだ不安は残ります。

でも、きちんと卒業できるかは不安な点も残っていますが、僕たちは日本で話題になっているよりも落ち着いています。

不安というよりは、ハーバードがいい学校だということ、改めてちゃんと学問の自由を守ることを第一原則としていると感じています。


(インタビューは2025年5月24日に実施。矢座孟之進さんは現在、映画制作にも取り組んでおり、6月から長編映画の撮影を開始予定。ハーバード大学での学業と並行して、クリエイティブな活動にも積極的に取り組んでいる)