「私の活動は、高校生活の間に着物のファッションブランドを立ち上げたこと。高校生で国際会議に登壇もしました」
こんな高校生とは思えない活動実績を持つのは、山口笑愛さん。日本の高校から世界最難関と言われるミネルバ大学に挑戦し、見事合格を勝ち取った。
高校時代は着物のアップサイクル(再創造)に本格的に取り組むなど、サステナビリティ分野でユニークな活動を展開してきた。
なぜ山口さんは世界最難関・ミネルバ大学でも通用する課外活動を行うことができたの?
インタビューで見えてきた「理想の高校生活」とでも呼ぶべき、山口さんの活動について詳細に語ってもらった。
高校時代、「好き」を軸に広がった挑戦
インタビュアー(以下、落合): 本日はお時間いただきありがとうございます。山口さんは高校在学中から着物のリメイクブランドを立ち上げたり、環境系のプロジェクトに参加されたりと、多彩な活動をされていたと伺っています。
山口笑愛さん(以下、山口): はい、高校2年生の頃に環境活動家の方の講演を聞いたことがきっかけで、サステナビリティ(持続可能性)に強い関心を持つようになりました。それまで私も含め周りでは、環境問題やSDGsは「意識が高い人がやること」「我慢しないと解決できない」といったイメージがあって、正直どこか他人事に感じていたんです。
でも、その講演で「環境問題を自分ごとに捉えること」の大切さにハッと気づかされて、「人が我慢するのではなく、幸せに直結する形で環境問題を解決できないか」という思いから、自分の「好きなこと」とサステナビリティを掛け合わせるプロジェクトに取り組んだんです。
「プロジェクト科」があるユニークな高校
落合: 山口さんの通われていた高校は探究学習が盛んなことで知られていますね。特に「プロジェクト科」というユニークなコースで学ばれていたとか。
山口: はい、私の通っていたかえつ有明高校には3つのコースがあって、その中のプロジェクト科に所属していました。プロジェクト科では座学の授業がほとんどなく、グループワークやプレゼンテーションを中心に、自分でテーマを決めて探究活動をするスタイルだったんです。高校の授業でこんなに自由にやりたいことを追求できるんだ、と最初は驚きましたが、おかげで『答えのない課題に自分で挑む力』がすごく鍛えられたと思います。
落合: なるほど。そのような環境で、山口さんは実際にどんな活動をされたのですか?
山口: 学校の内外で様々なプロジェクトに挑戦しましたが、その中でも特に印象的だったのが高校2年生のときの環境プロジェクトです。その一環で、高校生や社会人対象でワークショップを開催して、自分達の興味と環境問題を結びつけて考える場があったんです。私たちのワークショップには同じ学校の友人や他校の高校生や社会人の方など約20人が参加し、それぞれが「自分の好きなこと×SDGs」をテーマに意見交換する充実した場になりました。
その取り組みをさらに発展させ、サステナブル・ブランド国際会議というイベントのステージに立たせていただく経験もありました。その場で大人の方々の前で発表したことで、「高校生の自分でも社会に向けて発信できるんだ」と自信につながりましたね。
国際会議に登壇して見えた「日本のよさ」
落合: 高校生で国際会議に登壇とはすごいですね!そこから「日本文化」にも興味が広がっていったとか。
山口: そうなんです。国際会議で様々なセッションを聞く中で、日本文化の持つサステナビリティにも目を向けるようになりました。日本には昔から「もったいない精神」や「長く大事に使う」という文化が根付いていて、それ自体がサステナブルだと気づいたんです。ちょうどファッションにも関心があったので、日本文化の代表である着物に注目しました。
着物って直線裁ちで縫われていたり手縫いだったりして、とてもリメイクしやすく頑丈なんですが、現代の若い人には着にくかったり機能的でなかったりして敬遠されていますよね。そこで「着物をもっと日常に取り入れられる形にリメイクしたら、若い世代にも『これ可愛い!』と手に取ってもらえるのでは?」と考え、高校3年生の始め頃に着物のアップサイクル(再創造)に本格的に取り組み始めました。
おばあちゃんから譲り受けた古い着物やリサイクルショップで安く手に入れた着物を解いて、生地を使って新しい服やアクセサリーを作ったんです。そして2024年2月には、自分で着物リメイクブランド「u縁me」を立ち上げ、着物から作った洋服や小物をSNSで発信し始めたんです。自分のブランドを持って活動する中で、ものづくりの大変さと楽しさの両方を味わいました。
ブランド立ち上げで見えた「大学進学してもやりたいこと」
落合: 高校生でブランドを起ち上げるとは、行動力がありますね!反響はいかがでしたか?
山口: 学校の友人や先生はもちろん、SNSを通じて若い世代の方々から「面白いね!」という反応をもらえて手応えを感じました。卒業後もブランドは続けていて、期間限定のポップアップストアを出して商品を直接見てもらったり、小規模なファッションショーを開催したりもしました。今はミネルバ大学で各国を巡る経験を活かして、その土地ごとの文化と着物を掛け合わせた新しい作品を作りたいと考えています。
落合: 他にも高校時代に参加されたプログラムはありますか?
山口: 学校の外では、nestという次世代リーダー育成コミュニティにも参加していました。そこでは同世代のメンバーとチームを組んで、ファッションを通じて持続可能性とウェルビーイングを両立させる方法を模索しました。具体的には、エシカルファッションに親しんでもらうためのワークショップを開催したり、「Ethical Closet」という展示会を企画して若手デザイナーの作品やストーリーを紹介したりしました。その活動を通じて、全国の同世代と刺激を与え合うことができ、視野も広がりました。また、語学力を活かして英語の動画制作プログラムにも参加し、英語で情報発信するスキルも磨いていました。そのおかげで英語力も鍛えられましたし、高校生のうちから「自分にも社会のためにできることがある」と思えた経験が、ミネルバ大学への挑戦につながったのかもしれません。高校時代はとにかく、自分が熱中できることを軸にいろんな挑戦をしていたと思います。
落合: 受験勉強との両立は大変ではなかったですか?
山口: そうですね、正直テスト前などは大変でしたが、私の場合は学校のカリキュラム自体がプロジェクト活動を後押ししてくれたので恵まれていました。それに、自分の好きなことだったので忙しくても苦にならなかったです。むしろプロジェクトで得た刺激が勉強のモチベーションにもなって、文武両道ならぬ「勉強と課外活動両立」を楽しめました。
ミネルバ大学との出会い、そして受験へ
落合: そうした高校での挑戦を経て、山口さんはアメリカのミネルバ大学に進学されました。ミネルバ大学を志望したきっかけは何だったのでしょうか?
山口: 実は高校3年生のときまで海外の大学に進学するつもりはなかったんです。経済的なハードルが高いと思っていましたし、日本の大学(上智大学や早稲田大学、ICUなど)の受験勉強をしていました。でも、高校で偶然ミネルバ大学についてお話を聞く機会があったんです。私はたまたまその会には参加できなかったのですが、後から友人に「英語ができる人は全員受けた方がいい!」と強く勧められて(笑)、興味を持ってミネルバ大学について調べ始めました。
落合: 友人の一言がきっかけだったんですね。ちなみに「英語ができるなら」と言われたそうですが、山口さんはもともと英語が得意だったのですか?
山口: 小学5年生から中学2年生の途中まで、家族の都合でアメリカ・カリフォルニア州のサンノゼに住んでいたんです。そのときの経験で英語にはかなり慣れていましたし、帰国後も英語を使う環境をなるべく維持するようにしていました。なので、英語で授業を受けたりエッセイを書くことには抵抗がなかったですね。
落合: 調べていく中で、ミネルバ大学のどんなところに魅力を感じましたか?
山口: 一番は、多様性とユニークな学びのスタイルです。ミネルバ大学って学生の出身国が本当にバラバラで、世界中から集まっているんです。しかも4年間で世界7都市を実際に巡りながら学ぶので、教室には「マジョリティ」と呼べるような同質な集団がなくて、各人の個性が際立つ環境なんです。そんな空間で学べることに強く憧れを抱きました。「毎日振り返る余裕もないくらい刺激的な4年間を送りたい!」って思ったんです。ミネルバ大学は私にとってまさに理想的な環境だと感じ、挑戦してみることにしました。当時は正直、受かるかどうかより「やらないで後悔するくらいなら、やってみよう」という気持ちでしたね。
合格する自信は「まったくなかった」
落合: 試験自体も独創性を試す入試だとお聞きしました。手応えが掴みづらそうですが、受験中は「受かるかも」という予感はありましたか?
山口: いえ、まったく合格する自信はなかったです。本当にチャレンジングな受験だったので…。どちらかというと、「海外大学の受験を経験してみたい」「世界一イノベーティブと言われる大学の入試ってどんなものだろう?」という好奇心で受けた部分が大きくて、記念受験みたいな感覚でした。本当に合格するなんて思っていなくて、合格通知を見たときは心底驚きました。
落合: 海外大学に進学するとなると費用も大きな壁だったと思いますが、その点はどう克服したのでしょう?
山口: 正直、ミネルバの学費や渡航費は簡単に賄える額ではありません。でも私はどうしてもこのチャンスを掴みたいと思い、思い切ってクラウドファンディングに挑戦しました。
自分の活動や叶えたい夢を発信したところ、多くの方々が応援してくださって目標額を達成できたんです。支援者は200人以上にのぼり、本当に多くの方々に背中を押していただきました。自分一人の挑戦ではなく、皆さんのおかげで今こうして留学が実現しているんだと感じています。
高校生に伝えたいメッセージ
落合: 最後に、山口さんから高校生全般へのメッセージをお願いします。
山口: 私が高校生活を通じて感じたのは、「熱中できる何か」を持つことの大切さです。よく「挑戦しなさい」と言われたりしますが、私自身は何か無理に「挑戦しよう!」と思って行動してきたわけではなく、「これが好き」「これをやってみたい」という気持ちを追いかけてきた結果として、新しい挑戦がついてきたのだと思います。自分が心から好きだと思えるものに真っ直ぐ向き合っていると、その熱意は不思議と周りにも伝わっていくものです。
高校生のうちは勉強や部活で忙しいかもしれませんが、ぜひ自分が夢中になれることは何なのか、一度じっくり考えてみてください。好きなことが見つかったら、あとはそれを思い切り突き詰めてみることです。
海外大学を目指すなら英語の勉強ももちろん大事ですが、それ以上に自分はこれが好きだと言えるものがあることが、いざという時の原動力になると私は感じています。たとえ将来進む道が変わったとしても、その経験は必ず自分の糧になると私は思います。ぜひ怖がらずにいろいろなことに飛び込んで、周りのサポートも得ながら挑戦してみてください!
落合: 本日は貴重なお話をありがとうございました!
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