阪神間、西宮の岡田山。山ひとつがまるごとキャンパスという神戸女学院大学を訪ねると、まず目を奪われるのは、緑に包まれてたたずむ美しい校舎群だ。設計は、近江兄弟社(メンターム)の創業者としても知られる建築家ウィリアム・メレル・ヴォーリズ。1933(昭和8)年竣工の建物を中心に、キャンパスのほぼ全体(ヴォーリズ建築12棟)が国の重要文化財に一括指定されている。これは全国でも例のない、"学舎そのものが教育する"環境である。
ちなみに、西宮にありながら「神戸」を名乗るのは、創立の地が神戸・花隈(はなくま)だったころの名残。もともとひとつの山だった岡田山を譲り受けてキャンパスにした歴史があり、移転前からの神社が今も敷地内に残るなど、歩けばそこかしこに時間の層が顔をのぞかせる。
今回は、入学センター・広報室のみなさまに、大学の魅力と入試にかける想いをうかがった。
建物そのものが、人を育てる
.png)
「学生たちは、知らず知らずのうちに、この建物を大切に使っているのだと思います」。
90年近く使われてなお古さを感じさせない校舎は、関東大震災の後に設計されただけあって耐震性にも優れ、阪神・淡路大震災でも、後から増築された一部を除いてその大半が無事だったという。2026年4月に理事長へ就任した思想家・武道家の内田氏も、「建物そのものが人を育てる」という理念を大切に、女子大とリベラルアーツの魅力を各所で語り続けている。
見どころは景観だけではない。階段の手すりや館内のあちこちに、校章にちなんだ"三つ葉のクローバー”がそっと隠されているなど、設計者ヴォーリズの遊び心が随所にちりばめられている。ちなみに、同じヴォーリズの手による建築は、東京の山の上ホテルや明治学院大学、京都・鴨川沿いの東華菜館など全国に点在する。歩きながら「宝探し」ができるキャンパスなのだ。
全員が当事者"になる、少人数教育
.png)
神戸女学院の学びの土台は、創立以来受け継がれてきたリベラルアーツにある。その象徴が徹底した少人数教育で、授業の約7割が20名以下、ゼミに至っては10名以下だ。
「学生は"お客様”ではなく、みんなが事者。教員にいつ当てられるか分からない緊張感のなかで、居眠りする学生はまずいません」と広報担当者は笑う。
さらに、およそ400もの授業が他学部の学生に開放されているのも特徴だ。心理を学ぶ学生が「心と体」のつながりを知るために生命環境学部の授業を覗く、文学部の学生が心理学部の講義に足を運ぶ──学部の垣根を越えて、興味の赴くままに選択肢を広げられる。毎朝1時間目のあとに設けられた礼拝の時間(自由出席)でも、学部や立場を超えた多彩な人の話に触れ、視野が自然と広がっていく。ここには、キリスト教主義・国際理解の精神・リベラルアーツという三本柱が息づいている。
国際学部・心理学部といった学部名も、「学びの可視化」を意識したもの。何を学べるのかが直感的に伝わるよう、時代に合わせて学びを更新してきた歩みの表れだ。
語学とキャリアを、手厚く支える
.png)
英語教育にも定評があり、1・2年生の英語の授業数は他大学のおよそ倍。「コミュニケーション英語」の授業は"楽しい”と評判で、苦手な学生の底上げから得意な学生の伸長まで、レベルに応じて力を伸ばせる。留学先の授業料が無料になり学費も4分の3が免除される派遣留学など、国際教育の制度も手厚い。
そして神戸女学院を語るうえで欠かせないのが、「就職に強い女子大」としての実績を支える"プッシュ型”のキャリア支援だ。学生が相談に来るのを待つのではなく、職員が授業の時間をもらってまで、一人ひとりに直接声をかけていく。「就職活動に出遅れた学生ほど、キャリアセンターから足が遠のいてしまう。だからこそ、こちらから声をかけにいくんです」。大規模大学ではなかなか真似のできない、少人数だからこその伴走である。
幅広く学んだ人に、来てほしい
入試の根っこにあるのも、やはりリベラルアーツの精神だ。受験科目を絞る私立大学が増えるなか、共通テスト利用入試や複数科目を課す入試をしっかり残しているのは、「幅広く学んできた人に来てほしい」というメッセージにほかならない。年内入試(推薦)が約6割、一般・共通テスト利用が約4割弱。この規模で一般選抜の枠をしっかり保っている大学は、実はそれほど多くない。加えて、帰国生入試や編入学、外国人留学生の受け入れなど、多様な背景を持つ人が一つの場で交わることで学びの幅を広げたい、という願いも込められている。
評価の面でも、懐は深い。総合選抜では、アピールできるものは何でも提出してよい。とくに国際学部と文学部は、資格や課外の活動、制作物などを幅広く評価対象にすると明言している。「フランス語検定のように、好きを突き詰めた結果」も、きちんと見てもらえるのだ。制度をコロコロ変えるのではなく、学びの中身そのものを今の時代に合わせて磨いていく一その姿勢が、入学時点の学力より「これから学び続けられるか」を大切にする評価につながっている。
「自分が自分でいられる」場所で
.png)
理系女子がどうしてもマイノリティになりがちな共学と違い、生命環境学部では生物や科学が好きな女子が肩身の狭い思いをせず、伸び伸びと研究に打ち込める。心理学部では、漠然と「心理に興味がある」という段階で入学し、1年かけて幅広く学んだうえで自分のテーマをゼミで絞り込んでいける。総合大学の中に音楽学部を持つのも神戸女学院ならでは。専門に閉じこもらず、幅広い教養と結びつけて音楽を学べる環境が、視野を狭めない人間力を育てている。
やりたいことが、まだ定まっていなくてもいい。「私はまだ、私を知らない」という言葉のとおり、ここでの4年間は"自分探し”の時間でもある。建学の精神「愛神愛隣」──神を愛するように、隣人を愛しなさい──に根ざした人間教育は、他者を思いやり、感じ取り、伝える力を育てる。アナウンサーをはじめ「伝える仕事」で活躍する卒業生が多いのも、その土壌があってこそだろう。
最後に、受験生と高校の先生方へのメッセージをうかがった。「少し”くすぶっている"、けれど学ぶ意欲のある生徒さんにこそ来てほしい。大きな集団のなかで押し込められていたものが、ここでは自然と振り払われていきます」。ただし、少人数だから手取り足取り面倒を見てくれる、というわけではない。大学である以上、自主性は必ず求められる。裏を返せば、自分から動こうとする人には、どこまでも手が差し伸べられる。
周りの目を気にせず、自分のやりたいことにまっすぐ向き合える。神戸女学院大学はこれからも女子大であり続ける一"自分が自分でいられる”その環境こそ、この大学の何よりの魅力なのだ。





.png&w=3840&q=75)

.png&w=3840&q=75)
.png&w=3840&q=75)










.png&w=828&q=75)
.png&w=828&q=75)
