2026年の明治大学一般選抜入試で出題された国語の問題が、SNSを中心に大きな話題を呼んでいる。「直木賞創設者で、明治大在籍の人物は次の人物のうち誰か」という問題に、賛否両論が巻き起こっているのだ。

話題の問題とその正解

 問題の正解は「菊池寛」。1888年に香川県で生まれた菊池寛は、作家・劇作家として活躍しただけでなく、1935年に芥川龍之介賞と直木三十五賞という日本を代表する二大文学賞を創設した人物として知られている。明治大学との縁も深く、同大学に在籍していた経歴を持つ。

 この問題をめぐって、ネット上では様々な意見が飛び交った。「これは難問だ」と受験生の負担を懸念する声がある一方で、「文学史の一般常識の範囲内」と擁護する意見も。そして最も注目を集めたのが「愛校心が強すぎる」という指摘だ。確かに、菊池寛が直木賞創設者であることは文学史の知識として問われても不思議ではないが、「明治大在籍」という条件が加わることで、明治大学特有の出題意図が透けて見える。

これだけではない!明治大学の「愛校心問題」

 実は明治大学では、過去にも同様の傾向を持つ問題が出題されている。

 2023年の全学部入試では、こんな問題が出題された。

「本文に登場する作家のうち、明治大学の教壇に立ったことがない人物を一人選べ。」

A 久保田万太郎
B 萩原朔太郎
C 佐藤春夫
D 室生犀星

 という問題が出された。

 正解は久保田万太郎。この問題もまた、純粋な文学知識だけでなく、明治大学と各作家との関係性を知っていなければ正解にたどり着けない構造になっている。

こうした出題傾向から見えてくるのは、明治大学が単なる学力だけでなく、大学への関心や事前のリサーチ力も評価しようとしている姿勢だ。受験生に対して「本学のことをどれだけ調べてきたか」というメッセージを送っているとも解釈できる。

私大入試の新トレンド:「愛校心」を問う問題

 実は、こうした「愛校心を試す問題」は明治大学だけの現象ではない。多くの私立大学で、自校の歴史や著名な卒業生、校風に関する知識を問う出題が散見されるようになっている。

 私立大学がこのような出題をする背景には、いくつかの理由が考えられる。第一に、本気でその大学を志望している受験生を見極めたいという意図。大学側としては、入学後の退学率を下げ、愛校心を持って積極的に大学生活を送る学生を確保したいという狙いがある。第二に、大学のブランディング効果。入試問題を通じて自校の歴史や伝統、著名な関係者をアピールすることで、大学の格や伝統を印象づけることができる。

受験生はどう対策すべきか

 では、受験生はこうした問題にどう備えるべきだろうか。重要なのは、志望校の公式サイトや大学案内パンフレットを丹念にチェックすることだ。特に「沿革」「歴史」「著名な卒業生」「名誉教授」といったセクションは要注目。また、大学が運営する博物館や資料館がある場合、そこで紹介されている人物や出来事も出題対象になりやすい。

 オープンキャンパスや大学説明会に参加した際には、キャンパスツアーで紹介される銅像や記念碑、建物の名前の由来なども記憶に留めておくとよい。これらは大学が誇りに思っている要素であり、出題される可能性が高い。

 過去問研究も欠かせない。明治大学のように複数年にわたって同様の傾向の問題を出している場合、その出題パターンを把握しておくことで対策の方向性が見えてくる。

賛否両論:この出題傾向は適切か?

 教育関係者の間でも、この出題傾向への評価は分かれている。肯定派は「大学への関心や志望動機の本気度を測る有効な手段」「調べる力、情報収集能力も現代の重要なスキル」と主張する。一方、否定派からは「受験生の負担を増やすだけ」「本質的な学力とは無関係」「地方の受験生や情報格差のある家庭の子どもに不利」といった批判も出ている。

 確かに、オープンキャンパスに何度も足を運べる首都圏在住の受験生と、遠方でなかなか訪問できない地方の受験生では、情報収集の機会に差が生じる可能性は否めない。

まとめ:新時代の受験戦略

 私立大学入試における「愛校心問題」は、今後も増加する可能性が高い。受験生にとっては、従来の学力対策に加えて、志望校研究という新たな準備項目が加わったことを意味する。しかし見方を変えれば、これは真剣にその大学を志望する受験生にとっては有利に働く要素でもある。

 志望校について深く調べ、その大学の歴史や伝統、理念を理解することは、入試対策としてだけでなく、入学後の充実した大学生活につながる準備でもある。「なぜその大学に入りたいのか」という問いに向き合う良い機会と捉え、前向きに取り組んでいきたい。

 菊池寛と明治大学の関係を知ることは、日本の文学史と教育史の一端に触れることでもある。入試問題をきっかけに、そうした知的好奇心が広がっていくなら、それはそれで意義深いことかもしれない。