「私、全然日本で馴染めなかったんですよね。」

今回お話を伺った吉田美羽さん(仮名)は幼少期をインターナショナルスクールやカナダで過ごし、日本に帰国後「日本語がうまく話せない・書けない」「どこか普通の日本人と違う」ことを理由にいじめに遭い、不登校を経験しました。

その後、美羽さんは不登校を経て大学進学を目指すこととなります。インター卒で帰国子女という華々しい経歴を持つ彼女が、なぜ日本でここまで苦戦することとなったのでしょうか。

 

カナダで育った「当たり前の多様性」

「母は私たちに英語をベースとした教育を受けさせたいと言う思いがあったので、幼稚園はインターに通いました。」

幼少期、美羽さんはお母様の教育方針により都内のカナディアンインターナショナルスクールへ通います。インターナショナルスクールの使用言語は英語で、特にこの学校はカナダの教育制度に基づいた指導をする学校だそう。幼少期から通わせることで英語が自然と身についたり、様々な国籍の教員・園児がいるため、多様性も育まれると人気を集めています。

しかし、この環境に物足りず、さらに英語ベースの教育を求めたお母様はある決断をします。

「母と兄と私の三人で、カナダに移住することになりました。」

 

後々美羽さんがお母様からお話を聞くと、周囲のママ友たちからは

「そんなに幼い時から海外留学はしなくてもいいんじゃない?」「まだ早いよ」

といった反対もあったそう。しかし、そんな反対意見も押しのけ、吉田さんのお母様はカナダへの移住を決断します。

このときはまだ、この決断が後々美羽さんを苦しめることになるとは誰も思ってもいませんでした。

 

美羽さんがカナダに移住したのは、小学校入学と同時。場所はカナダのノースバンクーバー。

自然豊かな地域で現地校に通い、英語は自然と身につきました。

「2年生くらいになると、英語の発音もすっかり現地風になっていました。母は英語が話せなかったので、私と兄が通訳をしていました笑」

友人も多く、日常生活に不自由はなかったそう。体育の授業では湖に行ってカヤックするなど、自然豊かなカナダ特有の、のびのびとした小学生時代を過ごしたと言います。

 

しかし、物価の高いカナダで暮らしていけるほど特別裕福な家庭ではありませんでした。上がり続ける物価に耐えることができず、吉田さん一家は彼女が小学6年生の時に仕方なく日本へ帰国することになりました。

そして帰国後は、小学6年生として地元の公立小学校に通うこととなりますが、そこでは試練が待っていたのです。

 

 日本語が話せない私が不登校になるまで

帰国後、小学6年生として地元の公立小学校に数か月間通っていた時でした。

「幼少期からずっとインターやカナダにいたので日本語も全然話せないし読めない。特に書くのが苦手で。あとはピアスが空いていたから、同級生から変な目で見られていました。」

英語混じりの発音、帰国子女特有の振る舞い、そしてピアス。

どれもが“普通”ではないと見なされ、彼女は陰口をいわれるようになりました。

 

「最初はみんな、ちょっと変わった転入生が来た!くらいに思っていて、興味本位で色々話しかけてくれたりもして。でも、段々ひそひそと陰口を言われるようになりました。」

体育の着替え中後ろから聞こえてくる陰口、大縄で引っかかるたびに「またあいつのせい」と責められる声ーー

そんな些細な場面の積み重ねが、いつの間にか心をすり減らしていきました。

「だんだん教室に入るのが怖くなってきて。校長や担任に相談しても、話は聞いてくれても実際に何かが変わることはなくて。学校には味方がいないと感じていました。結局、卒業するまで学校には行けませんでした。」

そうして美羽さんは不登校となり、小学校の卒業式にも参加しなかったといいます。

 

一方で、カナダに住んでいた頃には「アジア人だから」と差別された経験は一度もなかったそうです。だからこそ、日本に帰国してから、見た目や文化の違いを理由に差別されたことに大きなショックを受けたと語ります。

カナダは多文化主義を掲げる国であり、移民や異文化への理解が比較的進んでいる社会です。もちろんすべての差別が存在しないわけではありませんが、公的にも人種差別やLGBTQへの偏見に対して強い批判的姿勢をとっています。

そんな環境から日本に戻ってきた美羽さんにとって、「同調圧力」や「普通であることを求められる空気」は、想像以上に息苦しいものでした。

 

そして、小学生ながらに考えるようになります。

「自分に合う環境ってなんだろう?」と。

もともと視野に入れていた中学受験を、不登校をきっかけに真剣に考えるようになり、同じようなバックグラウンドを持つ仲間がいる環境、もっと国際的で多様性のある学校を探し始めました。

不登校を経て中学受験!三田国際へ

「母は教育熱心だったので、カナダで過ごしていた頃は毎日たくさん勉強していて、成績も上位でした。だから、日本に帰ってきたときも自然と“帰国子女枠で中学受験しよう”という流れになっていました。」

そう語る美羽さんは、帰国子女枠で三田国際学園中学校に合格します。
この学校は偏差値65以上の中高一貫校で、英語での授業や多様性を重んじる校風が特徴

英語力や国際感覚を持つ生徒が多く、帰国生も多く在籍しています。

この新しい環境の中で、美羽さんは少しずつ自己肯定感を取り戻していきました。

 

「日本語はまだ苦手でしたが、私と同じように帰国子女の子もいたし、英語の授業もあったので、自分にはすごく合っていて楽しかったです。」

しかし、一度深く傷ついた心は、そう簡単には癒えません。小学校時代の経験は、美羽さんの心に影を落としていました。

「やっぱりどこかで、“浮いちゃいけない”って思っていて。仲良しグループから外れないように、必死に合わせていました。自然体ではいられなかったです。」

 

さらに、日本の教育のあり方そのものにも、違和感を覚えるようになります。

「テストはほとんど暗記中心で、“考える力”よりも“覚えて書く”ことが重視されるんです。試験のための勉強って感じで、記憶にも残らないし、学んでいる実感がありませんでした。」

校風としては居心地が良かったものの、教育スタイルや価値観の部分では「やっぱり自分には海外の方が合っているかもしれない」と感じるようになります。

そして彼女は、三田国際の附属高校には進学せず、自分にフィットする新たな学びの場を求め、再び海外へ飛び立つ決断をしました。

 

「自分に合う環境」を求めて──高校はニュージーランドへ

約4年間日本で過ごした美羽さんでしたが、自分を押し殺して過ごす日々や、暗記重視の教育制度に次第に息苦しさを感じるようになりました。

「やっぱり自分には、日本の教育は合っていないかもしれない」
そんな思いが次第に強くなり、中学3年の終わり、美羽さんはニュージーランドの全寮制女子校”ネルソン・カレッジ・フォー・ガールズ”への留学を決意します。

「高校は海外がいいと思っていましたし、新しい環境で学びたい気持ちもありました。ニュージーランドも女子校も寮生活も初めてだったんですが、全部に挑戦してみたくて。」

 

もちろん不安がなかったわけではありません。入学当初は、「新しい環境でうまくやっていけるのか」と不安や孤独を感じることもあったといいます。

しかし、彼女を待っていたのは、多国籍な生徒たちが自然に混じり合い、互いの違いを尊重し合う、まさに“多様性が当たり前”の世界でした。

「韓国人、中国人、タイ人、日本人…本当に色んな国から来ている子がいて、みんな違うことが前提で成り立っている環境でした。寮生活だったこともあって、すぐに打ち解けられました。」

現地で出会った友人たちは、「誰かを変えよう」としない人たちばかりだったといいます。

「みんな本当に優しくて、誰かが少し変わっていても、それを面白がって受け入れてくれる。“変人のままでいいんだよ”って空気があって、すごく気が楽になりました。」

自分の個性を否定されるのではなく、肯定されるという経験。
それは、美羽さんにとって、「周囲に合わせなくても、自分でいていいんだ」と思えた瞬間でした。

  

大学での挫折と帰国

そして高校卒業後、美羽さんはニュージーランドの獣医学部に進学しました。
幼い頃から動物が好きで、将来は獣医になりたいという夢をずっと抱いていたからです。

しかし、念願の進学を果たしたものの、厳しい進級制度やコロナ禍によるオンライン授業、そして学びのスタイルや環境とのミスマッチに直面します。

「すごくハードで、正直ついて行けなかったです。進級できないとわかった時に、日本への帰国を決めました。」

そうして、美羽さんは高校・大学と続いた海外での生活を経て、日本へ帰国する決断をします
“海外にこだわりたい”という思いを一度リセットし、「日本で学ぶ」という新たな選択肢にも目を向けるようになりました。

「この挫折をただの失敗で終わらせたくなかった。
ずっと理系で獣医一択だったからこそ、ここで思い切って違う分野にも挑戦してみたいと思えたんです。」

そこで彼女が選んだのが、幅広い分野を横断的に学べる「国際教養学部」でした。
国際的な環境で、興味のある領域を英語で学びながら視野を広げていけることが、美羽さんにとって何よりも魅力的だったといいます。

当初は、早稲田大学の国際教養学部(SILS)に強く惹かれ、2度チャレンジしましたが、結果は不合格。
それでも諦めず、自分の言葉で自分を伝える「書類選考型AO入試」で上智大学の国際教養学部に出願し、見事合格を果たしました。

以下が実際に合格したエッセイです。

 

 During my highschool years in New Zealand I was able to be involved in many discussions surrounding contemporary issues in my arahi (meaning ‘to lead’) classes. Among the topics we discussed, the issue of marketing fraud piqued my interest. After doing some research, I discovered many different past scandals and it made me wonder if the products I bought on a daily basis were really as they were advertised. I wish to study at Sophia University's Faculty of Liberal Arts because it will help me achieve my dream of working in the consumer protection industry.

 Marketing fraud is an Illegal activity where false and misleading advertisements and promotional claims are made to increase profit. Greenwashing, for example, is on the rise, as more companies begin to release and advertise green products, deceiving and taking advantage of their customers by falsely labelling their products to be eco-friendly for marketing benefits and profit. In another example of deceptive advertising, the cosmetic company, L'Oreal, was charged with falsely claiming specific skincare products to be "clinically proven" to make skin look "visibly younger" in a week. It was revealed that there were no studies on its products that prove any of its claims and eventually, they were banned by the FTC (Federal Trade Commission) from using any anti-ageing claims without scientific proof. In order to help protect consumers, like how the FTC has done, I would like to study at FLA with its interdisciplinary curriculum.

 In my first year studying at FLA I will take introductory courses as well as core program offerings which will help me improve key skills such as public speaking, critical thinking, and writing. Out of the three majors, I would pick International Business and Economics. In this major I am interested in courses such as "Marketing", “International business”, and “Consumer Behaviour”. Marketing courses would help me understand how companies promote their products and how they manipulate customers to buy their products. Consumer Behaviour courses will teach me how consumers think and what methods are the most effective to persuade them. International Business is also important for when I want to work with international organisations. I would also be interested in other fields outside of business, such as sociology and psychology. These will give me a better understanding of how people think, which will be useful for understanding target consumers' behaviour.

 When I imagine myself studying at Sophia University, it gives me a sense of comfort because Sophia's spirit reminds me of the system I had in my highschool called PRIDE values (Positivity, Respect, Integrity, Diversity, Equality) where the school had expectations of students across a wide-range of settings, and students were awarded for showing these values at school. Values such as diversity, which require us to embrace and value differences, reminds me of Sophia University's beliefs because they believe that being able to accept diverse values and differences will help connect the world for a better future. As this overlaps with my vision of the future, it gives me more reason to want to study at FLA.

I believe that studying at FLA will help me reach my life goal of working in the marketing industry and protecting innocent consumers from fraudulent organizations.

このエッセイには、ニュージーランドで学んだこと、マーケティングや消費者保護への興味、そして多様性を尊重する姿勢が、美羽さんの大好きな英語で丁寧に綴られていました。

美羽さんのこれまでの経験全が詰め込まれたエッセイです。

現在は上智大学の国際教養学部に通いながら、あらためて自分の興味や可能性を広げ、これからの進路を模索している最中だと語ってくれました。

最後に

不登校は、後ろめたいものでも、恥ずかしいものでもありません。
美羽さんはその経験をきっかけに、「自分にとって本当に心地よい環境とは何か」を見つめ直し、何度も進路を選び直してきました。

カナダ、日本、ニュージーランド、そして上智大学。
さまざまな場所での学びと葛藤を経て、ようやくたどり着いたのは、「そのままの自分でいていい」と思える場所でした。

グローバル教育も、不登校も、彼女にとっては人生をかたちづくる大切な通過点。
決して一直線ではなかった道のりこそが、自分らしさを見つける力になったのです。

大切なのは、自分を信じて、居場所をあきらめないこと。
美羽さんの物語は、今まさに迷っている誰かに、

「大丈夫。あなたの居場所は、きっとどこかにある」と、やさしく語りかけてくれます。