東進ハイスクールが独自に作成している「ダブル合格者進学先分析」に関する記事がネットメディア「リセマム」で公開され、教育関係者の間で話題になっています。

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 2025年に初めて早稲田大学が慶應義塾大学を上回ったというデータが示され、長年続いてきた早慶の力関係に変化の兆しが見えてきました。

ダブル合格者の進学比率【大学全体】

年度

早稲田

慶應

2018年

28.5%

71.5%

2019年

35.9%

64.1%

2020年

30.6%

69.4%

2021年

35.1%

64.9%

2022年

39.9%

60.1%

2023年

39.1%

60.9%

2024年

48.4%

51.6%

2025年

56.2%

43.8%

 東進ハイスクールより

 こちらの表によると、2018年から2024年まで、早稲田と慶應のダブル合格者は一貫して慶應を選ぶ傾向が強く、早稲田の進学率は30%台から40%台で推移していました。ダブル合格者は4人に1人しか早稲田に進学していなかったのです。

 ところが近年、状況が一変しています。早稲田の進学率が56.2%と初めて50%を超え、慶應の43.8%を上回ったのです。長年続いてきた早慶の関係に、明確な変化の兆しが見えてきました。

 この逆転現象は、一体何が原因なのでしょうか。今回は、この興味深い変化の背景にある4つの仮説について考えていきます。

仮説1:早稲田政経の数学必修化が東大・京大落ち受験生を呼び込んだ

 まず大きな要因として考えられるのが、早稲田大学政治経済学部の入試改革です。数学を必修科目としたことで、国公立大学志望者、特に東京大学の文系受験生にとって併願しやすくなりました。

 東大文系の入試では数学が必須なので、受験生は数学の勉強にかなりの時間をかけています。早稲田政経が数学必修になったことで、追加の科目対策なしに併願できるようになったわけです。

 東大文系入試は、社会が2科目受験しなければなりません。一方で、早慶志望の社会だと、日本史や世界史を1科目の勉強をすることになり、1科目を深掘りすることになります。ですから、早慶志望の人と東大志望の滑り止め受験だと、社会を選ばなければならないのは東大志望の人にとってはマイナスなのです。そこで、数学必須の早稲田政経はとても大事になるわけですね。

 一方、慶應義塾大学の多くの学部では小論文が課されています。東大には小論文は出ませんから、その対策に時間をかけられません。一部、商学部のB方式は数学の受験が可能ですが、それ以外は国公立志望者にとって対策の負担が大きくなっています。この違いが、東大落ち受験生の進学先選択に影響を与えていると考えられます。

 結果として、学力的に優秀な層が早稲田政経に流れるようになり、そこから大学全体の評価向上にもつながっているのでは?という考え方です。

仮説2:内部進学者優位の雰囲気がSNSで広まった

 近年のSNSやYouTubeの発達で、大学内部の雰囲気が以前より見えやすくなってきました。

 その中で、慶應義塾大学については、「幼稚舎出身者の方が大学からの入学者より上」といった内部ヒエラルキーに関する情報が、動画やSNS投稿を通じて広がっています。

 こうした「内部こそ本流」という排他的な雰囲気の存在が知られるようになって、大学から入学を考えている受験生、特に地方出身者や一般家庭の受験生が慶應を敬遠する傾向が生まれた可能性があります。

 大学は4年間を過ごす場所ですから、居心地の良さは重要な要素です。情報がオープンになった現代において、偏差値やブランドだけでなく、実際にどんな雰囲気なのかも進学先選びの重要なポイントになってきています。

仮説3:甲子園の応援スタイルがイメージに影響した

 2023年の夏の甲子園で慶應義塾高校が優勝した際、その応援のスタイルが話題になりました。産経ニュースでも報じられたように、「音がすごすぎる」「失策に歓声は……」といった批判的な意見がSNS上で広がりました。

 この出来事は一時的な話題だけで終わらず、慶應という組織全体の「ノリ」に対するイメージに影響を与えた可能性があります。特に、落ち着いた雰囲気を好む受験生にとっては、受け入れがたい部分があったかもしれません。

 甲子園という全国的に注目される場での出来事だっただけに、その影響は予想以上に大きく、早稲田への進学者増加の一因になった可能性も考えられます。

仮説4:「綺麗な早稲田」へのイメージ変化

 早稲田大学といえば、かつては「バンカラ」なイメージが強く、高田馬場で酔っ払って騒ぐ学生の姿が象徴的でした。しかし最近、そのイメージが大きく変わってきているようです。

 ネット上では「綺麗な早稲田」と呼ばれることもあると言われています。キャンパスの整備が進んだり、学生の雰囲気も以前より落ち着いてきたりして、女子学生も入学しやすい環境になってきたという評価が広がっているのです。

 古き良き伝統は残しつつも、時代に合わせて変化していく。この「適度な刷新」が、幅広い層の受験生に受け入れられるようになったと考えられます。バンカラすぎず、かといって堅苦しすぎない、バランスの取れた大学イメージの構築に成功したということでしょう。

まとめ:競争が生む好循環

 誤解のないように申し上げますが、早稲田大学も慶應義塾大学もどちらも素晴らしい大学です。2026年度には再び慶應が上回る可能性も十分にあります。

 重要なのは、こうした健全な競争が両大学をより良い方向へと導いているということです。早稲田は入試改革や環境整備に取り組み、慶應もこの結果を受けてさらなる改善を図るでしょう。受験生にとっては、魅力的な選択肢が増えることになり、良い状況と言えます。

 早慶の進学対決は、単なる数字の競争ではなく、日本の高等教育全体の質を高める原動力となっているのです。これからも両大学の良いライバル関係が続いていくことを期待したいところです。